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山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

フカヒレ食べるとホタテが減る?

『サメ乱獲でホタテ危機 カナダの大学など研究』(産経新聞2007年4月14日)
『シュモクザメやメジロザメといった大型のサメの数が、フカヒレ目当ての乱獲などで減少した結果、これらのサメが餌にしていた魚が増え、米国の東海岸でホタテガイなどが減る傾向にあることがカナダ・ダルハウジー大学などの研究で分かった。』(以下略)

(1)フカヒレの持ち主の大型サメが減っている。
(2)大型サメの餌であるエイなどは増えている。
(3)エイの餌はホタテなどの貝類である。
(4)エイが増えた海域でホタテは減った。

 だから、ホタテの減少は、サメ漁のせい。大型のサメを捕獲するのをやめましょうという話だそうです。
 どのくらい確かな話なのでしょうか。サメの増減一つ取っても、なかなか推定するのが難しいと思うのです。例えば手がかりとなる漁業水揚げ量にしても、フカヒレだけの状態で水揚げされたり、副業的に混獲される分が多かったり。
 ましてや、その先の因果関係となると、さらに証明は厳しい気がします。

『南方のエイで二枚貝被害 温暖化も一因、対策なく』(西日本新聞2007年4月7日)
『熱帯や亜熱帯の広い海に生息する「ナルトビエイ」によって、豊前海のバカガイや有明海のタイラギなど二枚貝が食べられる被害が、九州を中心に広がっている。温暖化による海水温上昇などが原因』(以下略)

 日本のほうでも似たような騒ぎが起きて、こちらは海水温上昇が原因との見方をしています。表象が似ているだけで、原因は別問題かもしれませんが。
 まあ、漁獲制限という方向の対策のようですから、推論に誤りがあっても、それほどひどい結果にはならないかもしれません。これが、増えたエイを害獣駆除しろという方向だったら、もう少し落ち着けと言いたくなります。

 記事では、『国際的な漁獲規制などはまったく存在しない。』と研究者の一人が言っていますが、実際には、ある程度の規制は進んでいるようです。
 米国では1997年以降、ホオジロザメなどの陸揚げが禁止されています。規制対象は「陸揚げ」ということで、スポーツフィッシングでキャッチ&リリースならば、直接には関係ないということでしょうか。スポーツフィッシングには、別の規制があるようですが。
 2004年には、日・米・欧州連合が、大西洋水域でのフカヒレ専門漁の中止を合意しています。

参考サイト
サメの海」:特に「サメの保護」の章。

追記
 ところで、『「軟骨ががんに効く」などと宣伝されたこともあって個体数が減少しているアブラツノザメなど2種類を、条約の規制対象種にしようと提案する』というのですが、こういう商品の話でしょうか。そうか、ガンにも効くのか……いや、サメ乱獲原因説よりももっと怪しいような気が。

寄り鯨を食べる

『クジラ:沖合いの定置網に迷い込む 三重・紀北』
『ひん死の状態だったため、救出をあきらめ、クジラにロープを掛けて船で引本漁港まで運んだうえ、クレーンを使って魚市場に引き揚げた。(中略)胸びれの特徴などからザトウクジラと分かった。』(毎日、2007年3月24日)

 クジラが座礁したりするのは珍しいニュースなのかと思いきや、調べてみると、それほど極端に珍しいわけでもないみたいです。
 水産庁に報告があった、定置網に大型クジラがかかったケースだけで、2003年はミンククジラ125頭・ザトウクジラ3頭・ニタリクジラ1頭・セミクジラ1頭、2002年はミンククジラ109頭・ザトウクジラ3頭にも及んでいます。それ以外の座礁や小型クジラのケースまで入れて記録している国立科学博物館も勘案すると、2倍以上になるようです。
 定置網にかかった分だけで、平均3日に1頭くらいは発生してるんですね。まあ、魚の群が通るところに仕掛けるんでしょうから、魚を追ってきたクジラもかかってしまうのは、仕方ないのかも。

 クジラが座礁してしまったりしたときは基本的に海に逃がすようですが、食用になる小型クジラや、大型クジラでも定置網に混獲されたものに限っては、無理に逃がさないで捕獲してしまっても現行法上かまわないのだそうです。ただし、密漁防止のため、大型クジラはDNAサンプルを採ったり手続が必要です。
 前掲の水産庁で把握した分は、数頭を除いて捕獲して鯨肉として利用したようです。販売したケースのほか、昔ながらに地元で分配したケースもあるのが興味深い。

 気になるお値段のほうですが、科博のデータでは2トン前後のミンククジラで150万円、最高で6.5トンのミンククジラが480万円という落札価格が出ています。網の修理代くらいは、十分出るんじゃないでしょうか。
 今回のケースでは、希少価値のあるザトウクジラで、しかも10トン近い大きさですから、1000万円近くなりそうな気がします。寄り鯨一頭で七浦潤うというのは、本当だったんですね。

追記
 実際の落札価格は、360万円になったようです。予想は大はずれでした。
『定置網にクジラ! 三重で水揚げ 競りで360万円』(読売,2007年3月24日)

参考サイト
水産資源の持続的利用を考えるページ」:水産庁捕鯨班の公式サイト
海棲哺乳類ストランディングデータベース」:国立科学博物館動物研究部の公開データ

ちょっと勇魚捕り史

 昨日の記事「鯨飲は原因か」で頂戴したユウ氏のコメントで、『日本の捕鯨の歴史をアピールしてますが、実際調べてみると?なこと多いです』とのご指摘がありました。
 気になって、手元の資料で少しだけ調べたところ、なかなか面白かったので一部ご紹介させて頂きます。

 日本での本格的な捕鯨は、江戸初期頃に起源があるのだそうです。
 始めは「突捕り式」と呼ばれる、小型船から手投げ銛を使って捕獲する方法でした。
 そのうち、有名な紀州太地の辺りで発明されたのが、「網捕り式」という、先にクジラを網で包み込んでから銛を打つ方法です。死ぬと沈んでしまう種類のクジラでも、捕獲することが可能になったのが改良点のようです。

 ただ、太地の捕鯨は、享保頃に最盛期を迎えた後、以後は早くも衰退期に入るようです。二野瓶徳夫「日本漁業近代史」に拠れば、沿岸のクジラ資源の枯渇ないし回遊パターンの変化に原因があるのではないかと言います。
 ネットで調べると米国船の捕鯨拡大や「背美(せみ)流れ」という一大遭難事故が原因と書かれていることが多いです。しかし実際には、それ以前に衰退が始まっていたようで、個人的には新発見でした。

 一方、近代的な捕鯨砲を使った「ノルウェー式」捕鯨の導入のきっかけは、ロシアの南下政策と関係があるそうです。
 日本近海で本格的なノルウェー式捕鯨を開始したのは、ロシア人なのだと言います。ロシア皇太子(後の皇帝ニコライ2世)が訪日した際、随員のカイゼリング伯爵が、鯨資源が豊富なことを知り「太平洋漁業社」を設立。日本向けに鯨肉輸出を始めたのでした。
 この「太平洋漁業社」には、もうひとつ裏の顔があったと言います。それは、一種のスパイ組織でした。ロシア政府の資金を得て、極東方面の測量活動を行っていたようです。極東での南下政策の一端を担っていたわけです。

 「太平洋漁業社」の成功を見て、日本でもいくつかの企業が、ノルウェー式捕鯨に乗り出しました。
 最初に成功したのが、1899年創業の「日本遠洋漁業株式会社」でした。創業者は、ロシアの捕鯨を直接見てきた代議士だそうです。
 日露戦争後には、ロシアからの鹵獲捕鯨船3隻の払い下げを受けるなどし、日本のノルウェー式捕鯨は急速に発展していきます。

 ところが捕鯨の発展は、必ずしも歓迎されなかったようです。
 日本では、クジラは、しばしば漁民の信仰の対象になっていました。クジラが魚群を追いかけて出現することから、クジラの存在が豊漁と結びつき、「恵比寿」と称されたとか。北欧でもニシンの仲間Seiを漁場に呼んでくれるという似たような伝承があるそうで、イワシクジラの英名Sei-whaleの由来となっているとか。
 従来は漂着鯨を授かり物として利用するだけでいたところ、恵比寿様を殺すとは何事かとなったようです。魚が取れなくなったらどうすると。
 さらに、捕鯨に伴う公害も、実質的問題でした。捕鯨業者は、クジラを解体した後、価値の高い皮脂や上級肉のみを利用していました。残りは、付近に海洋投棄していたようです。
 その後、工場を建設して低級肉や骨なども肥料として利用するようになったため、多少は改善されたものの、今度は捕鯨シーズン以外も工場からの廃棄物や騒音、悪臭などが出るようになってしまいました。

 1911年には、1000人以上の漁民が捕鯨事業場を焼き討ちし、死傷34人を出す大惨事まで発生したようです。もともと捕鯨の習慣がなかった地域へ、新興産業の近代捕鯨が乗り込んできたため、生じた悲劇と言えるかもしれません。

 私は、いままで、捕鯨推進派の主張内容のほうが、基本的に真実に近いと思ってきました。
 でも、昨日から、ちょっと調べてみた今の感想としては、推進派・反対派とも相当変なことを言っているのねと言う風に変わってしまいました。

<参考文献>
二野瓶徳夫「日本漁業近代史」(平凡社,1999年)

鯨飲は原因か

 サンマ、大変おいしく頂いています。サンマという魚は、年によって豊漁・不漁がだいぶ変動がある生き物のようですが、今年は豊漁とか。
 ふと思い出したのが、変動の一因にクジラが絡んでいるという話です。大学の歴史学の講義で、なぜか取り上げられていて、聞いた記憶があります。当時の資料を引っ張り出して見てみると、人類が利用している海面水産物の数倍をクジラが食べているとあります。なるほど。

 原資料の小松正之「くじら紛争の真実」にあたると、人類の海面生産9000万tに対して、クジラ類の捕食量は3~5億tとありました。ミンククジラはサンマやイワシを食い荒らしていると写真付きで載っています。
 著者は、捕鯨が、食糧危機の救世主となりうると言っています。増えすぎたクジラを減らせば、水産資源のより効率的利用ができるということのようです。

 ただ、よく読むと、この数字はちょっと大げさなように思えました。
 実際には人間と競合しない部分が多く含まれているようです。
 付表を見ると、クジラ側の算定ベースになっているのは、シロナガスクジラやミンククジラなどのヒゲクジラのほか、マッコウクジラやイルカ類まで含めた推定値です。
 ところが、同書によると、このうちマッコウクジラなどは深海イカを主食としているとあります。さらに、南極にいるクジラは、ナンキョクオキアミというプランクトンだけを食べるのだそうです。太平洋などのヒゲクジラも、別に魚だけを食べるわけではなく色々食べるようです。
 著者自身、深海魚やオキアミは人が好むものではないとして、利用可能資源の計算から除外しようとしているのに、一方で計算に入れるのは適当では無いでしょう。
 非常におおざっぱな計算ですが、こうした非競合分は2億~3億5000万tくらいになりそうです。マッコウクジラと、南極のヒゲクジラと、太平洋のヒゲクジラの半数の消費量を足した数字です。

 そうすると、実際の競合分は、せいぜい1億t~1億5000万tといったところとなりそうです。それでも人間以上の量ですから、なかなか大きな数字です。
 ただ、色々な種類を全部合わせてこの量ということを考えると、雑食なのにこれだけ食べるホモ・サピエンスの方がすさまじいかなとも、私には思えます。

 クジラに漁獲減少の責任を被せるのは、ちょっと無理があるんじゃないかなというのが個人的な結論です。人間の方が増えたから、最近競合するようになってきたというのが、客観的なところではないでしょうか。
 それにクジラを減らしても、それで単純に人間の取り分が増えるほど、生態系は単純ではないような気がするんですけどね。例えばマッコウクジラを減らすと、生き延びるイカが増えて、それがイワシをもっと食べるかもしれないなあなどと。
 人間の知ってることなんて、まだまだ少ないでしょう。生物を『合理的に管理すべき人類』なんて発想は、いまのところ忘れておいたほうが賢いと思うのですけど。

 少しだけ利用させて下さいくらいが良いとこなんじゃないかな、と思いつつ、食べるサンマのはらわたはちょっと苦いのです。

参考
小松正之「くじら紛争の真実 その知られざる過去・現在、そして地球の未来」(地球社,2001年)
プロフィール

山猫男爵

Author:山猫男爵
ここは「塹壕文庫」「山猫文庫第二壕」に続いて三代目のブログになります。
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