山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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回転翼の海鳥たち(第2回)

2.回転翼の離陸
 人は大昔から、空を飛ぶ夢を抱いてきました。
 この夢は、モンゴルフィエ兄弟、ライト兄弟によって実現されます。彼らは、それぞれ気球、飛行機という方法を編み出しました。

 こうした先行者のほかに、また別の飛行機械のアイディアが存在します。それが回転翼機、いわゆるヘリコプターです。
 古くは、レオナルド・ダ・ヴィンチが、デザインを残していることはよく知られています。

 ところが回転翼機の実現は、他の飛行機械に比べても遅れることになります。原因の一つは、軽く強力な動力源が無かったことのようです。
 内燃機関の発達により動力源の問題は解決されても、なお回転翼機の実用化には、時間がかかりました。もう一つの遅れの原因は、機体左右の揚力バランスを保つことの困難にありました。
 回転翼機では、回転するローターの翼面効果で揚力が生まれます。通常の飛行機は、前進することで翼に対して風を当て、揚力を生じさせます。それに対し回転翼機は、機体全体は動かずに翼だけを動かして風を当て、揚力を生じさせる原理です。
 無風状態で垂直に上昇するだけなら、ローターに当たる風速はどこも一定ですから、揚力バランスは崩れません。ところが、機体が前進しはじめたとたん、左右で翼との相対的な風速に差が生じ、揚力バランスが崩れるのです。当然、揚力が強い側が浮き上がってしまって、機体が横転してしまうのです。
  outengensyo.png
 これは、機体を前進させない場合でも、自然の風が吹いてきたら、同じ結果を生じます。

 この横転現象を解決して見せたのが、スペインの航空技師、フアン・デ・ラ・シエルバJuan de la Ciervaでした。シエルバは、ヘリコプターに至る前段階として、ヘリコプターとは異なる回転翼機オートジャイロAutogyroの研究に取り掛かります。
 オートジャイロとは、ヘリコプターと異なり、ローターを直接回す動力を使わない回転翼機です。普通の飛行機と同じように、前進用の動力だけを持っていて、ローターは空気抵抗で自然に回転するだけです。自然に回転する方式なので、“Auto-gyro”(自動回転)と言う名になります。ちなみにヘリコプターがエンジンが止まっても墜落しないのは、ちょうどオートジャイロと同じ状態になるからです。
 さっそく試作を行ったシエルバですが、彼も機体の横転問題に苦しむことになります。
 しかし、1923年、試作4号機のC.4で、ついに飛行に成功します。最初の有人気球から140年、ライト兄弟から遅れること20年、ようやく回転翼機が実用化に成功した瞬間でした。
 シエルバの編み出した解決策は、ローターの1枚1枚(ブレード)をバラバラに作り、ヒンジ(関節)を介して回転軸につなぎ合わせるという方式でした。これならば、各ブレードが自由に上下できるため、揚力に左右差が生じても、ブレードのみが自然に動くだけで差を吸収でき、機体バランスが崩れないのです。
 この発明は、後にヘリコプターにも導入され、その実用化につながります。

 シエルバは、実用化したオートジャイロを“Autogiro”(一般名詞と綴りが異なる。)として特許登録します。彼は、スペイン政府の支援と英国の資本により、シエルバ社を設立すると、生産と販売に乗り出すのです。
 その短距離発着能力や低速飛行能力には、各国企業が興味を示し、ライセンスを取得しています。
 特に興味を示したのは、アメリカでした。ケレットKellett社とピトケアンPitcairn社という2つの企業が、オートジャイロ事業に取り組みます。
 そして、このアメリカで、回転翼機と海とが、最初の出会いを迎えることになります。(第3回へつづく


追記
 シエルバ技師はスペインの英雄とされ、肖像などが切手のデザインにも用いられました。「中級者による切手分類」というサイトで、彼の肖像やシエルバC.4などの切手を見ることができます。

 初期のヘリコプターとしては、係留気球的運用も考えられたようです。第一次世界大戦中にオーストリアで研究された例などがあります。
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