山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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レンバタ島のマッコウ捕鯨

 某巨大掲示板からのアクセスが急に出てきたので、なんだろうと思ってたどってみたら、インドネシアのレンバタ島ラマレラの捕鯨が危機にあるようです。

『揺れる捕鯨の村:インドネシア・ラマレラから/上 観光化説くNGO
 「援助」で誘う「文化」の断絶』(毎日新聞2008年8月26日)
 イギリスの環境保護団体が現地を訪れ、捕鯨を中止してホエール・ウオッチングやその他の漁業に切り替えよと迫ったとのこと。

renbata.png レンバタ島Lembataとは、インドネシアとオーストラリアの国境地帯である小スンダ列島の島で、正式にはロンブレン島Lomblenといいます。ティモール島の近くです。(地図はWikimediaの画像を編集)

 レンバタ島の捕鯨については、記事中に登場する小島曠太郎氏の「クジラと生きる―海の狩猟、山の交換」(中公新書、1999年)という本に詳しいです。マッコウクジラ数頭を筆頭に、シャチやイルカなどのハクジラ類を、昔ながらの丸木舟で捕獲しているといいます。マッコウクジラの肉は癖が強いそうですが、現地では非常に好まれているようです。
 捕獲した鯨は肉を干物にして、主に内陸の農耕民との交易に用いるそうです。村全体の共有物に近いかたちで再分配され、各村人が交易に出かけて主食のトウモロコシに換えるといいます。
 面白いことに、漁民が自分たちで鯨肉を食べることはあまりないそうです。主食のトウモロコシを得るための貴重品だから、自分では食べないようです。なので、鯨料理の種類もあまり多くないそうです。もっとも、これは、鯨肉に限らず料理法自体があまり分化していないということのような気もします。

 問題のマッコウクジラは、現在では絶滅の可能性はまずないだろうと思われます。全世界で10万5千頭以上(記事には北西太平洋に10万2千頭となってますが、近年の研究では同海域3万頭ほどのようです。)が生息すると推定され、一方でほとんど捕獲も行われていません。日本の調査捕鯨で年に10頭以下と、後はレンバタ島程度なのではないでしょうか。
 当該環境保護団体の担当者は、『「生息数は計画に関係ない」とし、「目的は住民の生活水準向上だ」と計画続行を主張』しているそうです。しかし、「クジラ・イルカ保護協会」という団体名からして、生活水準に主な目的があるとは思えないのですが。

 仮に生活水準向上が目的だとしても、近代的捕鯨装備の供与を受けても昔ながらの方法に自ら回帰したラマレラの人々に対して、「生活水準向上」と称して変化を迫るのは疑問です。物々交換で生活していた周辺の農耕民の生活も、基盤を破壊されることにつながるわけで、まともな行為とは思えません。

追記
 環境保護団体側のエリック・ホイットErich Hoytという方は、ホエール・ウォッチングに関して世界的に著名な人物のようです。もともとはシャチなどクジラ類の研究者で、その後、環境保護とホエール・ウォッチングの推進活動家になった方だといいます。日本にもやってきてホエール・ウォッチングの広報活動・興行をしています(三河湾の例)。
 ホイット氏の主張は、捕鯨よりもホエール・ウォッチングのほうが経済効果が高いから、捕鯨をやめてホエール・ウォッチングをせよというもののようです(概略としてJapan-Times紙2005年6月21日に氏の文章があります)。レンバタ島での活動もその一環ということですね。国際捕鯨委員会IWCでも、非致死的利用も最近の議題になっているようです。
 しかし、「大方町近海に13頭いるクジラを捕獲すると4億円程度の収入なのに、ホエール・ウォッチングなら15年で51億円の経済効果となる」旨の例などを挙げているようですが、乱暴すぎると感じます。現代の持続可能な捕鯨の考え方からすると、こんな全頭捕獲はしないでしょう。それに必ずしも観光と捕鯨は二者択一でもないと思われます(ふれあい牧場でジンギスカン)。資源量や集客見込みによって適宜組み合わせて利用すればよいだけのような気がします。
 なお、こちらにホイット氏の公式サイトがありますが、更新は停止状態のようです。
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