山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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戦争特派員―ゲルニカ爆撃を伝えた男

 湾岸戦争の際に、新聞各社の紙面を飾った「重油まみれの海鳥」の写真があります。イラク軍が石油施設を破壊して海洋汚染を引き起こしている証拠として説明されたわけですが、後に無関係のタンカー事故の映像だと明らかになっています。


ニコラス・ランキン「戦争特派員―ゲルニカ爆撃を伝えた男」
塩原通緒(訳) 原題:“TELEGRAM FROM GUERNICA”(中央公論新社、2008年)

戦争特派員―ゲルニカ爆撃を伝えた男 (INSIDE HISTORIES)総合評価:★★★★★
 ドイツ軍が古都ゲルニカを爆撃してバスクの民間人を殺戮した、とのニュースはヨーロッパの多くの人々に衝撃を与えた。ドイツに対する非難が高まり、ピカソは大作ゲルニカを発表する。このゲルニカ空襲の記事をタイムズ紙に送ったのは、ジョージ・スティアという若き英国人フリージャーナリストであった。
 エチオピア、スペイン、フィンランドと戦地を回るスティアの記事は、たびたび一面を飾り、世論を議会を動かしていく。そして、第二次世界大戦が激化すると、その能力と知識に目を付けた英国軍により、スティアは情報将校に取り立てられ、謀略宣伝の戦場に身を投じることになる。
 残された6冊の著作と日記などから、ジョージ・スティアの短くも劇的な半生を描き出す伝記。
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スウェーデンの潜水艦狩りの真相

 最近、日本領海内に国籍不明潜水艦が侵入した事件がありましたが、これに関連してスウェーデン海軍への誤解が散見されます。「冷戦時代にスウェーデン海軍は領海侵犯したソ連潜水艦を爆雷で追い込んで座礁させた」というもの。
 これは、2つの事件が混じってしまっています。1981年のS-363座礁事件と、翌1982年のムスケ島沖対潜作戦です。前者は単なる事故で、後者は戦果は確認されず空振りに終わったと言われるものです。

 まず1981年の座礁事件は、10月27日に、スウェーデンの漁船が、海岸付近の岩礁に乗り上げたソ連海軍の通常動力型潜水艦S-363(事件時の呼称 U-137)を発見したことで始まります。西側ではウィスキー級という識別コードが振られている潜水艦だったため、「ウィスキー・オン・ザ・ロック事件」などと呼ばれます。
 スウェーデン海軍のカールスクローナKarlskrona基地からわずか10kmの地点にもかかわらず、座礁後18時間以上も発見されなかったようです。スウェーデン軍はあわてて警戒配備しつつ、離礁作業への協力をS-363に申し出ますが、拒絶されます。
 そうこうするうち、航洋曳船と駆逐艦からなるソ連海軍救助艦隊が出現。ソ連艦隊は領海ぎりぎりまで接近し、スウェーデン艦隊及び沿岸砲台とにらみ合いとなりました。ソ連側から航洋曳船だけが分離して領海へ侵入しますが、スウェーデン魚雷艇に接近されると引き返しています。スウェーデンの沿岸砲台が、偶然通りかかったドイツ商船を誤認して発砲しそうになるなど、極度の緊張状態に達したようです。
 結局、外交交渉の末、11月6日にS-363は公海上へ引き出されて開放されています。

 一方の1982年の事件は、スウェーデン海軍基地ムスケMuskö島の近くで、国籍不明の潜水艦を発見したとして、10月4日から2週間にわたって爆雷攻撃などを行い、侵入者を浮上させようとしたものです。
 9月末から沿岸で正体不明の潜望鏡らしきものが目撃されていたところ、10月4日夕刻に沿岸砲台が潜水艦の艦橋らしきものを発見したと報じます。通報を受けて出動した哨戒艇が、爆雷を投下して警告を実施しました。
 さらに翌10月5日早朝には、ムスケ島から1km以内の海底に全長40m弱の小型潜水艇らしきものが着底しているのが、ソナーで発見されます。閣議の後、首相はついに実力行使に同意し、同日午後、潜水艦を損傷させてでも浮上させることを決めます。
 こうして世界中から数百人の報道陣が詰め掛ける中で「Notvarp(引き網?)作戦」は開始され、2週間にわたって水上艦艇やヘリコプターなどを動員した「戦闘」が行われました。爆雷がいくつも投下され、磁気探知機の反応に対して管制機雷の起爆もしたようです。潜水艦の行動音と思われるものも録音されましたが、とうとう「戦果」は確認されなかったようです。したがって「潜水艦」の正体も明かされていません。

 当時、スウェーデン周辺には外国潜水艦が頻繁に行動しており、スウェーデン海軍の潜水艦が至近距離に忍び寄られてしまうなど、問題化していたようです。こうした時期であり、特に前年に引き続いての事態であったこと、またも主要海軍基地の懐に入られた失態などが重なって、1982年の強硬な対応につながったのではないかと思います。そうそう安易に強攻策に出たものではないでしょう。
 撃沈や拿捕といった目に見える戦果こそありませんでしたが、スウェーデンとすれば断固たる国防意思と一応の対潜能力を見せたことで、目的は果たせたといえるでしょうか。

 なお、1982年の掃討作戦については、いまだに新事実・新研究が出ているようです。
 ひとつは、当時録音された「潜水艦の行動音」の一部は、実は付近を航行中の別の水上船舶の推進音だったのではないかという分析結果です。スウェーデン軍が依頼調査したところ、そのような結果が2008年の5月に出てきました。スウェーデン軍とすればこのような結果が公表されることは利益とは思えないのですが、わざわざ調査するとはたいしたものです。
 もうひとつは陰謀論というべきもので、国籍不明潜水艦の正体はアメリカの潜水艦だったのではないかという仮説です。興味がある方は、詳しくは参考資料の Tunander教授の論文をご覧になってください。まあ、スウェーデン周辺海域で暗躍していたのが、ソ連潜水艦だけではないのは確かでしょうね。


参考資料
The Saga of Soviet Submarine W-137
Ola Tunander “Some Remarks on the US/UK Submarine Deception In Swedish Waters in the 1980s
スウェーデン防衛研究所プレスリリース(2008年5月20日)
 “Recorded submarine sounds could have been a surface vessel

戦車戦入門―日本篇

 第二次世界大戦時の日本軍従軍経験者の方の体験談などを読んでいると、敵側には戦車がたくさん居るのに、日本軍は小火器だけという状況が多いです。
 しかし、興味を持って少し調べてみると、配備密度や性能はともかく、日本軍の戦車も意外に多くの部隊に配備されて、各地に投入されていたということを知りました。戦闘となると、悲惨な結果になるのがたいていでありますが。


木俣滋郎「戦車戦入門<日本篇>」
              (光人社NF文庫、1999年)
戦車戦入門―日本篇 (光人社NF文庫)総合評価:★★★☆☆
 日本軍の機甲部隊について、主に戦史面から紹介する入門書。1981年初版の「世界戦車戦史」から、日本軍関連の記事を抽出した内容。2006年発行の文庫新装版も特に内容面の変更はないと思われる。画像は新装版。

 日本の機甲部隊であれば陸軍戦車部隊に限らず、騎兵系列の捜索連隊や海軍陸戦隊の装甲車両についても取り上げる。満州事変・上海事変から始まりノモンハン事件、太平洋戦争ではマレー作戦、タラワ戦、大陸打通作戦、ルソン島防衛戦など合計20の戦場を紹介。
 速射砲や破甲爆雷で連合軍戦車と対決した日本軍歩兵の苦闘にも触れる。

定本・菊兵団 軍医のビルマ日記

 軍隊では、正体を隠すためにコードネームを使うことがありますが、日本陸軍でも太平洋戦争中には「通称号」という部隊コードネームを使っていました。各師団などに一文字ないし二文字の文字符を割り当てて、その隷下部隊には数字を追加して表現する仕組みです。例えば戦車第2師団「撃」兵団の工兵隊は「撃 12105」部隊となります。
 末期にはこちらで紹介されているように、「震天」「不滅」などのむやみに勇ましい名前を割り当てられた例も出てきます。


塩川優一「定本・菊兵団 軍医のビルマ日記」
                 (日本評論社、2002)
定本・菊兵団 軍医のビルマ日記総合評価:★★★★☆
 ビルマ方面で活躍した菊兵団こと第18師団所属の軍医が、当時の日記を元にまとめた回想録。1994年刊行の「軍医のビルマ日記」に、他の資料や読者の体験談から記述を追加した改訂版。
 入隊から敗戦後の捕虜生活まで、自己の体験談に加えて、多くの資料を参考に菊兵団衛生部隊の活動を記述する。所属は第18師団のうち歩兵第114連隊で、階級は戦地で軍医大尉に昇進する。

 フーコン作戦などに参加した第18師団は、米式装備の中国軍を相手に頑強な抵抗を見せたことで知られるが、その戦闘を影で支えたのは軍医や衛生兵であった。最前線では衛生要員といえど安全ではない中、薬品を詰めた鞄を抱えて山野を駆け巡ったのである。
プロフィール

山猫男爵

Author:山猫男爵
ここは「塹壕文庫」「山猫文庫第二壕」に続いて三代目のブログになります。
連絡したいことがある方は、記事のコメント欄か、サイドバー下方のメールフォーム、あるいはツイッターから、お気軽にどうぞ。
Twitter:baron_yamaneko

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