山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
    --:-- | Top  このエントリーをはてなブックマークに追加

ダンピールの海―戦時船員たちの記録

 軍隊が行動するときに、作戦名をつけることがあります。
 西欧の軍隊の場合、なかなか洒落たものをつけるようです。例えば、「春の目覚め作戦」(1945年春、独軍最後の攻勢)やら、「オリンピック作戦」(九州上陸作戦)など。
 一方、日本の場合、シンプルなものが多いようです。単に地名から取ったり(ミッドウェー攻略なら「MI作戦」)、意味の無い文字だったり(マリアナ防衛「あ号作戦」)
 そういう意味でわりあい例外的なのが、「81号作戦」でしょうか。ニューギニア方面の強行輸送船団のことで、姉妹船団の「18号作戦」とともに駄目もとの「一か八か」からとったと言われます。本当なら嫌な凝り方です。結果として、ダンピール海峡付近で輸送船8隻は全滅しました。


土井全二郎「ダンピールの海―戦時船員たちの記録―」
                          (丸善,1994年)

撃沈された船員たちの記録―戦争の底辺で働いた輸送船の戦い (光人社NF文庫)総合評価:★★★★★
 太平洋戦争中、多数の日本民間船舶が、戦火によって失われた。あるものは徴用されて部隊や軍需物資を輸送中に、あるいは生活を支える資源を運ぶ途中で。
 しかし、激しい敵の攻撃や、時に理不尽な軍の命令に苦しんだその具体像は、軍艦の場合と比してあまり一般には知られていない。 その知られざるエピソードの数々を伝える、戦没船員6万人への鎮魂の書。
 なお、改版が「撃沈された船員たちの記録―戦争の底辺で働いた輸送船の戦い」の名で光人社NF文庫より発売。(画像は光人社NF文庫版)
 著者は、朝日新聞記者で、船舶関連のプロだった方です。以前に、朝日紙上においても、戦時商船をテーマとした連載を担当したことがあるそうです。
 本書は、その連載とは重複を避けた内容の書き下ろしです。従来光の当たらなかったマイナーな部分を、なるべく取り上げたとのこと。表題にもなっているダンピール海峡の悲劇のほか、開戦前後・ガダルカナル・南方資源船団・終戦間際など、緩やかにテーマ分けされた配列で、商船のエピソードがまとめられています。
 登場する艦船は、わずかに触れるだけのものも入れるとちょうど100隻です。巻末の船名索引にまとまっており、便利です。

 マイナーなものを取り上げたと自称されるとおり、私は初めて知るエピソードが多く、興味深かったです。以下、面白かった例をいくつか挙げます。
 客船「長崎丸」は、開戦時に米商船「ハリソン大統領」拿捕に活躍しました。捕まった「ハリソン」は、北京原人の標本輸送任務を予定していたのだそうです。
 「浄宝縷丸」は損傷して、足掛け16ヶ月も座礁の後、乗員の努力で復旧、日本を目指します。残念ながら、再び被雷して失われるのですが。
 戦時標準型青函連絡船「第11青函丸」は、終戦翌日に公試試験を行った船です。敗戦に呆然とする海軍監督官を尻目に、職務にまい進した国鉄職員の責任感には感動しました。

 読み進めていくと、軍人による不当な扱いも散見され、考えさせられました。航海情報が機密として教えられなかったり、潜望鏡が見つけられないのは精神のたるみと言われたり。軍事優先の世情に、御上意識や兵站の軽視が重なった結果でしょうか。
 そうした状況ゆえ、海の男としての気概と責任感を発揮した人々のエピソードが、余計に立派に見えました。

総合評価:★★★★★(靖国とは別の「英霊」の責任と悲劇の一端。)
Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://yamanekobunko.blog52.fc2.com/tb.php/102-73a7f774
プロフィール

山猫男爵

Author:山猫男爵
ここは「塹壕文庫」「山猫文庫第二壕」に続いて三代目のブログになります。
連絡したいことがある方は、記事のコメント欄か、サイドバー下方のメールフォーム、あるいはツイッターから、お気軽にどうぞ。
Twitter:baron_yamaneko

最新記事
カテゴリ
検索フォーム
参加企画
にほんブログ村 歴史ブログ 近代・現代史(日本史)へ
にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ
リンク
FC2カウンター
メールフォーム

名前:
メール(不要ならそのまま):
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。