山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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雪の中の軍曹

 金曜日に東京で初雪が降るかもしれないと、テレビの天気予報で言っておりました。的中すれば、観測史上最も遅い初雪という記録になるそうです。


マリオ・リゴーニ・ステルン「雪の中の軍曹」
        大久保昭男(訳)    (草思社,1994年)

総合評価:★★★★★
 第二次世界大戦、枢軸軍の敗色が次第に色濃くなりつつある1942年末の東部戦線。その戦場を生き延びた、一人のイタリア軍下士官の回想記。小説家でもある著者の文章は、無駄が無く、それでいて生き生きと情景を伝える。
 深い雪の中、満足な補給はなく、武器も食糧も指先までも凍りつく冬のロシア。ドン河畔の拠点は孤立し、ついに退却命令が下る。そんな苛酷な状況でも、時に兵士たちは人間としての顔をのぞかせ、著者はその一瞬を逃さず書き留める。
 イタリア軍一兵士の回想、しかも東部戦線が舞台という、邦訳されているのが不思議に思える本です。しかし、読んでみると、確かにそれに値する名著だと納得します。

 著者は、ドイツとの同盟に基づき、対ソ戦に送られたイタリア兵です。所属は、第6山岳兵連隊の第55中隊とされます。
 描かれているのは、1942年のクリスマスから、イタリア軍が東部戦線から撤退した翌年の3月までの約3ヶ月のできごとです。2部構成で、第1部「拠点」は、ドン河畔の塹壕拠点での防衛戦闘。第2部「孤立部隊」は、拠点を放棄しての敗走過程を映し出します。
 一般的な戦史で言うと、スターリングラード攻防戦が枢軸側の敗北に終わる時期です。本書中のソ連軍の攻勢は、枢軸側の弱点であるイタリア軍を攻撃した「小土星」作戦の一部にあたるのだと思います。

 不幸なイタリア兵の生活が、実に生々しいです。
 鉄兜と銃剣の柄でコーヒー豆を挽く。パスタを入手して狂喜する食事の話。クリスマスの特別食は、豪華だけど、やはりいつもどおり冷凍状態。衣服はしらみだらけ。恐ろしいことに靴を失った兵までいて、代わりにわらを針金で巻きつけています。

 いくつかのエピソードで垣間見える兵士の人間くささが、忘れられません。
 塹壕での対峙が続くうちに、敵との馴れ合いが生じたこと。その「平和」もつかの間で、ソ連側に増援が来ると、激戦に変わってしまったこと。
 ロシア兵、ムッソリーニ、スターリンにも「メリー・クリスマス」と言うイタリア兵たち。(自国指導者も、並んで入っているのはどうなんでしょう)
 負傷した敵兵の「ママ」と泣く声に、「俺たちと同じだ」と同情して、収容作業の妨害を禁じたエピソード。
 逃げ込んだ先の民家で、先客のソ連兵と出くわしてしまうが、何事もなく一緒に食事を食べさせてもらった話。
 著者は、協力するドイツ戦車を頼もしく感じている一方、その戦車にやられたソ連兵を見る目は同情的な色を帯びているようです。
 どこにもあからさまな反戦主張はないのに、読み終えた後には、戦争の愚かしさの苦い味が残りました。

総合評価:★★★★★(淡々とした描写が、戦争の残酷さを痛いほど感じさせる)
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