山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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戦車隊よもやま物語

 作家の司馬遼太郎は、太平洋戦争中に戦車に乗っていました。当時の体験をもとに、いくつかの文章を残しておられ、日本の戦車について「憂鬱な乗り物」だったと評しています。


寺本弘「戦車隊よもやま物語」
              (光人社NF文庫、2004年)
総合評価:★★★★★
 輸入戦車に始まった日本陸軍戦車隊は、国産戦車の配備を受け実戦経験を積みながら次第に成長し、太平洋戦争緒戦の電撃戦を成功させた。しかし、性能に勝る連合軍戦車との戦闘では苦戦を強いられることとなった。
 弱い火力と薄い装甲の「十五万両のお棺」に乗って、日本の戦車兵は何を思いながら戦ったのか。どのような工夫で弱点を補おうとしたのか。元戦車隊中堅将校が、自己の体験を元に読みやすいエッセイ風に、しかし脚色には溺れずに正確にと綴った日本戦車兵の実相。
 著者は、陸軍士官学校卒の正規将校で、太平洋戦争開戦時には中尉で戦車第1連隊所属、終戦時には上級部隊の戦車第1師団司令部勤務だった方です。生粋の戦車隊将校と言えます。
 読んでいると、文章もこなれていて、体験談以外の戦車隊の発展史なども簡潔かつ正確に書かれており、流石に生粋の戦車将校だと思いました。

 本書の中心となる著者の体験談は、主に太平洋戦争初期のマレー半島とビルマでの侵攻作戦に関するものです。マレー作戦では、捜索第5連隊基幹の佐伯挺進隊に配属され、辻参謀の指示を受けてのタイ軍との戦闘と、ジットラライン突破などに参加しています。その後、ビルマでは英軍のM3軽戦車との戦闘も経験し、敵戦車砲弾を被弾するあわやという場面もあります。
 行動を追っていくと、当時の日本陸軍式戦車運用が垣間見えます。
 戦場心理の面で、いくつかのエピソードが特に興味深く思われました。「後退」など戦場での禁句の話や、負傷した兵士が任務を捨てて遊兵化するのに注意すべきという話、狙撃兵にむきになってしまった話など、それぞれ考えさせられました。

 巻末には、著者の体験談のうち、著者が接した3人の高級士官についてのエピソードが記されています。それぞれ戦車第1連隊長だった向田宗彦大佐と藤田実彦大佐の2人と、山下奉文大将です。著者と山下大将とは、満州で開かれたマレー作戦慰霊祭で会ったといいます。祭礼後の宴席で、山下大将の膝に座っていたという話には驚きました。各人物に興味を持つ方には、多少参考になるかもしれません。

 戦友の戦車将校から採集されたエピソードも、とても珍しく興味深いものが多いです。以前に紹介した戦車用冷房の件や、鹵獲した敵戦車部品を利用した増加装甲、空挺戦車部隊の始末などが出てきます。
 このほか、戦車の生産数推移表や終戦時の部隊配備状況、マレー戦での戦車損失原因表など、文庫本ながら情報は充実しています。日本の戦車について興味を抱いた方には絶対に読んでいただきたい、密度の高い文庫として心からお勧めします。

総合評価:★★★★★(実戦経験を伴った確かな知識の結晶)
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