山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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定本・菊兵団 軍医のビルマ日記

 軍隊では、正体を隠すためにコードネームを使うことがありますが、日本陸軍でも太平洋戦争中には「通称号」という部隊コードネームを使っていました。各師団などに一文字ないし二文字の文字符を割り当てて、その隷下部隊には数字を追加して表現する仕組みです。例えば戦車第2師団「撃」兵団の工兵隊は「撃 12105」部隊となります。
 末期にはこちらで紹介されているように、「震天」「不滅」などのむやみに勇ましい名前を割り当てられた例も出てきます。


塩川優一「定本・菊兵団 軍医のビルマ日記」
                 (日本評論社、2002)
定本・菊兵団 軍医のビルマ日記総合評価:★★★★☆
 ビルマ方面で活躍した菊兵団こと第18師団所属の軍医が、当時の日記を元にまとめた回想録。1994年刊行の「軍医のビルマ日記」に、他の資料や読者の体験談から記述を追加した改訂版。
 入隊から敗戦後の捕虜生活まで、自己の体験談に加えて、多くの資料を参考に菊兵団衛生部隊の活動を記述する。所属は第18師団のうち歩兵第114連隊で、階級は戦地で軍医大尉に昇進する。

 フーコン作戦などに参加した第18師団は、米式装備の中国軍を相手に頑強な抵抗を見せたことで知られるが、その戦闘を影で支えたのは軍医や衛生兵であった。最前線では衛生要員といえど安全ではない中、薬品を詰めた鞄を抱えて山野を駆け巡ったのである。
 相対的に安全な後方部隊所属で、知識人であるという事情からか、元軍医が書いた従軍記は割合に多く出版されている気がします。しかし、本書はそうした軍医戦記の中で、特筆に価する一冊であると考えます。

 第一に、戦闘部隊と違って取り上げられることの少ない、衛生部隊の編制や任務について詳細に記述されている点が珍しいです。軍医著作の場合でも編制面にはほとんど触れないものが多いですが、本書では師団編制内の衛生部隊について体系だった説明がされています。これは、一般的な軍医とは違って、著者が軍隊に関心が強かったためかもしれません。
 師団所属の4つの野戦病院の性格が、第1~3は歩兵連隊配属部隊で、人員構成は軍医17名以下の300名ほどであること。師団衛生隊の編制や、野戦病院との役割分担など、細かくまとめられています。運用上の役割分担はとても勉強になりました。

 第二に、参考文献の扱いが非常に厳密に行われて、論文風の体裁になっていることです。自己の体験と、参考資料によった部分が区別され、引用元が細かく記されています。資料性が高いです。

 内容は、フーコン作戦中の第1大隊への配属と、その後の仏領インドシナまでの長い撤退行、サイゴンでの捕虜体験といったところが中心です。ビルマの風俗や、敵戦車と遭遇するなどの前線体験などが綴られます。
 変ったエピソードとしては、天然痘の発生を早期に発見して上官に報告したところ、かえって叱られて、連隊内での極秘の隔離措置だけで済ませてしまったという話がありました。部隊長の衛生管理責任を問われるから、師団全体での検査などはしなかったとのこと。
 また、かの辻参謀と出くわしてしまって乗馬を召し上げられてしまうというエピソードも出てきます。変な命令を貰わないで済んでほっとしたとか。

 ちなみに、著者のことについては、田中稔「死守命令」(光人社、1999年)などの他の戦記にも「塩川軍医」などとして登場することがあります。対照して読んでみるのも面白いかもしれません。

総合評価:★★★★☆(日本陸軍衛生部隊について手堅くまとまった佳作)
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