山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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戦車戦入門―日本篇

 第二次世界大戦時の日本軍従軍経験者の方の体験談などを読んでいると、敵側には戦車がたくさん居るのに、日本軍は小火器だけという状況が多いです。
 しかし、興味を持って少し調べてみると、配備密度や性能はともかく、日本軍の戦車も意外に多くの部隊に配備されて、各地に投入されていたということを知りました。戦闘となると、悲惨な結果になるのがたいていでありますが。


木俣滋郎「戦車戦入門<日本篇>」
              (光人社NF文庫、1999年)
戦車戦入門―日本篇 (光人社NF文庫)総合評価:★★★☆☆
 日本軍の機甲部隊について、主に戦史面から紹介する入門書。1981年初版の「世界戦車戦史」から、日本軍関連の記事を抽出した内容。2006年発行の文庫新装版も特に内容面の変更はないと思われる。画像は新装版。

 日本の機甲部隊であれば陸軍戦車部隊に限らず、騎兵系列の捜索連隊や海軍陸戦隊の装甲車両についても取り上げる。満州事変・上海事変から始まりノモンハン事件、太平洋戦争ではマレー作戦、タラワ戦、大陸打通作戦、ルソン島防衛戦など合計20の戦場を紹介。
 速射砲や破甲爆雷で連合軍戦車と対決した日本軍歩兵の苦闘にも触れる。
 著者の木俣滋郎氏は軍事史関係の著作の多い方で、ご存知の方も多いでしょう。文体などに若干くせのある方で、本書もいかにも木俣氏らしい著作と言って良いと思います。
 非常にくだけた調子の文体で、「」の会話文も多用した講談調です。人によって親しみやすいと感じるか、幼稚と感じるか好みが分かれそうです。会話文の多くは想像で書かれたもののようですが、他の本で史実のように引用されてしまっている場合があります。

 内容面でマイナーな部隊をいくつか取り上げているのも、木俣氏の特徴です。本書で言えば、チモール島攻略戦の軽装甲車隊(敵方のオランダ軍含め)、上海事変やラビ上陸作戦などでの海軍陸戦隊の装甲車両などは、文庫本で手に入る資料では珍しいと思います。
 もちろん、「入門」と銘打っているだけのことはあり、ノモンハンやサイパンなど日本戦車隊の戦闘としては著名な事例も大体押さえてあります。占守島の戦いは欠けています。なお、序章として日本の戦車開発史も図解入りで簡単にまとめてあり、戦車師団などの編制表も随所に挿入されています。巻末には諸元表も付いています。よって、戦史中心といっても、日本戦車全体の入門書としても一応の内容は揃っていると言えます。

 文体の好みを別として本書の問題点を挙げると、第一に、挿入されている図版が本文とはしばしば無関係に配置されていることです。試作戦車や装甲兵車の類まで、かなり多くの車両の写真やイラストが載っているのですが、本文に出てきても参照しにくいです。前述の編制表も、陸戦隊の章に唐突に戦車師団編制が載っていたりします。雑誌の欄外豆知識のようで、入門書としては不親切設計と感じます。
 第二の問題点は、事実誤認・混乱を招く誤植が散見されることです。例えばレイテ戦関連では、戦車第2師団派遣部隊に97式中戦車が配備されていた(実際は95式軽戦車)、捜索第1連隊の94式軽装甲車が上陸用舟艇と交戦した(同連隊は装甲車を持ち込んでおらず、実際は戦車第2師団から配属の95式軽戦車)などが明らかに誤りと思われます。文庫化時も、新装版発行時も手が入っていないようです。木俣氏ご本人が高齢で、もはや直すのが難しいという事情もあるのでしょうが。

 結論として、初出が古い文章であり、内容的に怪しげな部分が多々ある一方で、戦史面では今でも類を見ない内容をいくつか含んでいるといえます。日本軍戦車隊の活動範囲が意外に幅広いことを、文庫で手軽に知ることができるという意味では悪い本ではないです。珍しい内容を見つけた上で、他の資料を探して裏を取るという読み方になりそうです。

総合評価:★★★☆☆(手がかりには面白いですが、鵜呑みにすると危険な木俣節)
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