山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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インド洋孤島戦記―海軍アンダマン根拠地隊の戦い

 日本海軍には、陸上戦闘部隊として海軍陸戦隊というものがありました。
 太平洋戦争中には前線各地に海軍基地を設ける必要が生じたため、特設根拠地隊や特別根拠地隊、警備隊などと呼ばれる広い意味での陸戦隊が大量に生まれています。これらは、艦船への補給などを行うとともに、陸警科・水警科という地上戦闘と沿岸警備を担当する部門を持ち、基地の防衛に当たっていました。
 名高い上海特別陸戦隊などもあり、アメリカの海兵隊のような精鋭部隊を想像させますが、実力としてはお寒いものでした。海軍内部でも「余芸」「傍流」と冷遇されていたようです。


小澤一彦「インド洋孤島戦記―海軍アンダマン海軍根拠地隊の戦い」
                    (光人社NF文庫、2008年)

インド洋孤島戦記―海軍アンダマン根拠地隊の戦い (光人社NF文庫)総合評価:★★★★☆
 太平洋戦争中、インド洋にも侵攻した日本海軍は、英領アンダマン諸島を占領した。そして、その防衛組織として、第12特別根拠地隊を設置する。
 予備学生として海軍士官となった著者は、館山砲術学校で陸戦術を専攻すると、南下する戦艦「大和」に便乗して、このアンダマン諸島へ送られる。
 最初はのどかな南国の島にも徐々に英軍の反攻の手が伸び、補給を立たれて孤立した根拠地隊は、襲来する英機動部隊と終戦まで交戦を繰り返すこととなる。
 同期の体験も織り交ぜながら、予備学生と特務士官ばかりの陸戦隊を振り返る回想録。
 著者の予備士官としての視点が非常に色濃く反映された本です。予備士官グループとしての強い仲間意識が見えます。
 予備士官は兵学校出身者に比べると非エリートです。著者からすると、陸戦隊として最前線に送られる差別を受けたということになります。(予備士官は陸戦専修が多かったという事情もあるのでしょうが。)
 しかし、兵隊から叩き上げの特務士官と比べると、速成教育でいきなり少尉というエリートなのです。快く思わない特務士官は射撃訓練などで勝負を挑んできますし、著者らは、特務士官を硬直的で伝統にこだわりすぎると思うことになります。
 日本海軍の人事制度の特色や問題点を考える上で、ひとつの参考資料となりそうです。

 戦闘記録として読んでいくと、日本海軍の陸戦隊の良い資料になります。地上での実戦こそ無いですが、専門教育機関である館山砲術学校での教育の概要や、沿岸砲台での戦闘などが描かれます。戦車や火炎放射器の操作まで習ったようです。
 陸軍部隊との共同演習のエピソードがあるのも興味深いです。陸戦マーク持ちの専門家としての自負が伺えます。
 海軍陸戦隊の陣地構築への認識が伺えるいくつかのエピソードも興味深いです。陣地構築は体力消耗を招くから、それよりも機動的に部隊を運用しようというのが著者の構想だったようですが、上陸前の艦砲射撃などを受ければ悲惨な結果になったのではないかと思えます。

 小型舟艇を利用した活動が出てくるのも、資料として役立つと思います。
 著者は水上警備科(水警科)にも一時配属となったため、各種舟艇の指揮もしています。おなじみの大発動艇のほか、機帆船や第101号哨戒艇「隼」と称する鹵獲哨戒艇なども持っていたようです。
 シンガポールから大発を自力回航したというのには驚きました。17m型の特大型で、現地改修で屋根も追加されていたようですが、あんな平底舟でよくインド洋を渡れるものです。

総合評価:★★★★☆(予備士官で海軍陸戦隊という体験を生かした良書。)
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