山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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戦場の一年

 第一次世界大戦というと、日本ではあまり大きく取り上げられません。
 その中でも特に、イタリア戦線での戦いとなると、ほとんど資料が無いような気がします。オーストリア=ハンガリー二重帝国とイタリアの間で、イソンゾ河やアドリア海などでしつこく戦闘が行われて、多くの犠牲が生じているのですが。


エミリオ・ルッス「戦場の一年」
 柴野均(訳) (原題“Un anno sull'altipiano”)(白水社、2004年)

戦場の一年 (白水uブックス―海外小説の誘惑)総合評価:★★★★☆
 第一次世界大戦中の北部イタリア戦線でのイタリア軍の戦いを描いた自伝的小説。映画「Uomini Contro(敵対し合う人々)」(1970年)の原作。
 「サヴォイア」の掛け声とともに勇敢な突撃をしていた兵士たちは、一年も膠着する戦況、不十分な兵器、狂気に満ちた師団長の命令に次第に疲れ、酒浸りになっていく。そしてついにはサボタージュが広がってしまう。
 心に強く残った出来事だけを拾い集めて、日本人の知らない不毛な戦場の光景を描き出す。
 作者のエミリオ・ルッスは海外では著名な人物のようで、作家としての活動のほか、第一次世界大戦後に国会議員となったのを皮切りに政界で活躍しています。ムッソリーニににらまれて1926年に投獄され、脱獄、フランスへ亡命。なお、第二次世界大戦後は大臣も務めています。(詳細はWikipedia英語版
 第一次世界大戦中は、1915年に学徒出陣して以来、サッカリ旅団第151歩兵連隊の将校として活躍し、停戦時には大尉まで昇進しています。本書は、その時代の経験に基づいたものです。

 あくまで小説ということにはなっており、登場人物も仮名です。しかし、研究によると、ほとんどの登場人物にはモデルがあり、描かれた事件も実際に起こった出来事のようです。
 重要人物として「レオーネ将軍」という狂気に満ちた師団長が出てきますが、この人も実在の人物であったとすれば、イタリア兵に同情したくなってきます。部下を死地に追いやって戦死させては勇敢さを称え、命令で後退中の兵士を脱走兵と決め付けて銃殺しようとしたりします。部下から死を願われているのですが、悪運が強く、どんな無謀な行動をしても間一髪助かって兵士にため息をつかせるという人物です。
 「新兵器」の工兵用防弾鎧などという代物が登場するのも、史実通りなのか気になります。映画版にも登場しますが、いずれでも機関銃であっけなく引き裂かれてしまうのでした。(映画版でよたよた歩く姿が、なんとなく新世紀エヴァンゲリオンに出てきたジェットアローンに似ている気がします。)

 イタリア軍というと、なんとなく戦争に不真面目な印象がありますが、それらしいエピソードも出てきます。前線の将兵がみな酒浸りで、陣地内にはコニャックの香りといった状況だったりします。これは敵方のオーストリア軍も同じだったように描いていました。全般に酒の話がよく出るのが印象的です。
 イタリア軍の駄目さについて、当のイタリア人将校連が語り合う場面もあって、笑えるような泣けてくるようなお話です。
 第二次世界大戦の東部戦線に関する「雪の中の軍曹」と並んで、珍しいイタリア軍視点の従軍記として、前線の雰囲気を知るには良い本だと思います。

総合評価:★★★★☆(イタリア人の見た塹壕戦の狂気)
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