山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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水母の起源

 「水母」といっても、クラゲの話ではありません。クラゲの起源はカンブリア紀にさかのぼると聞きますが。
 水上機母艦のお話です。世界初の水上機母艦は日本の「若宮丸」ではないかとの指摘を頂いたのですが。

1910年、水上機が実用化される。
1911年、米装甲巡「ペンシルヴァニア」で、水上機発着実験に成功。
 同年、敷設艦「フードル」(旧水雷母艦)が、航空機搭載設備を装備。
1912年、敷設艦「フードル」が、本格的な水上機母艦に改装完了。
1913年、運送船「若宮丸」が、臨時に水上機3機を搭載し、演習に参加。
1914年5月、「フードル」で、滑走台からの発進に成功。
 同年6月、米海軍が、戦艦「ミシシッピ」等に水上機を搭載し実戦使用。
 同年8月、「若宮丸」、水上機母艦としての艤装完了。
 同年9月、「若宮丸」、青島攻略に参加。

 概ね、水上機母艦の出現から実戦までの歴史は、以上のような経過のようです。
 見ての通り、フランス海軍の「フードル」の方が、最初の水上機母艦と呼ぶにふさわしいかと思われます。1912年の同艦の改装完了をもって、水上機母艦が誕生したと言えるのでは無いでしょうか。
 1912年の「フードル」の航空設備は、8機分の格納庫のほかに、艦首には滑走台が設置されていました。1914年5月には、この滑走台を利用した発艦にも成功しています。

 この点につき、1914年5月を「フードル」の実用開始と誤解して、1913年に発進させた「若宮丸」の方が世界初と言う方がいらっしゃいます。
 しかし、1913年段階の「若宮丸」は、演習に際して臨時に水上機を積んだだけです。母艦と呼ぶのは、やや苦しい気がします。「若宮丸」の改装が完了した1914年8月では、結局「フードル」よりも後になってしまいます。
 それに、前述の通り、1914年5月は、「フードル」の滑走台を利用した発進実験の日であり、「若宮丸」同様の水上発進は、1912年にすぐに行われているようです。ちなみに、「若宮丸」が滑走台からの搭載機発進実験に成功するのは、1920年のことになります。

 一方で、実戦に用いられた最初の水上機母艦というタイトルは、「若宮丸」のものとして良いかと思います。1914年9月の、有名な青島攻略作戦です。

 もっとも、1913年の「若宮丸」のように、臨時に積んだだけでも水上機母艦と呼ぶとしたなら、1914年4月のアメリカ海軍の例が、世界初ということになるかもしれません。メキシコ内戦への介入において、前ド級戦艦「ミシシッピ」及び軽巡「バーミンガム」が、それぞれ1機の水上機を搭載して実戦参加しています。以前にも少しだけ触れたベラクルス上陸作戦です。
 部隊上陸後、計2機の水上機は「ミシシッピ」に集中され、偵察や連絡任務に活躍しています。当時「ミシシッピ」は、水上機の訓練部隊付属の母艦になっていて、整備・補給設備を設置されていたようです。最長1ヵ月半近くにわたって、地上整備無しでの水上機運用を継続しており、それなりに充実した航空設備があったように思います。ただし、追記のように戦艦として輸出されていますから、基本デザインの変更まではないでしょう。
 同年夏には、同様に臨時改装を受けた装甲巡洋艦「ノースカロライナ」に母艦任務を引き継いでいます。なおこの「ノースカロライナ」は、翌年に、世界初の艦載機カタパルトを装備して、航空巡洋艦と呼ぶべき姿になっています。最大5機を搭載して、カリブ海方面での警備任務を行ったといいます。

 このほか、バルカン戦争(1912~1913)の際に、ギリシャ海軍が貨物船に水上機を搭載して実戦投入したという話も、福井静夫氏の著作で見たことがあります。ただ、ほかの資料で確認したことが無いのですが。


追記
 戦艦「ミシシッピ」は、その後、姉妹艦と共にギリシャに輸出され、ギリシャ戦艦「キルキス」となっています。「キルキス」は、第二次世界大戦時に、ドイツ空軍の爆撃で撃沈されることになります。

参考文献
佐藤和正「空母入門」(新装版、光人社NF文庫、2005年)
瀬名堯彦「世界の『水上機母艦』発達史」(「丸」(潮書房)に連載中)
福井静夫「世界空母物語」(福井静夫集第3巻、光人社、1993年)
 
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