山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

スペイン内戦と海軍(第19回)

7.海上作戦の経過
 (8)ビスケー湾の戦いの終り


 1937年6月14日、バスク政府は、首都ビルバオの港に停泊する艦船全てに、脱出命令を下します。ビルバオ放棄が決定したのです。
 大型の貨物船から、小は遊覧ボートまで、難民を満載して次々と出港していきます。目的地は、まだ共和派勢力下に残るサンタンデルSantanderやヒホン、それにフランス南部の各港です。軍艦とて例外ではなく、駆逐艦「ホセ・ルイス・ディエス」「シスカル」は、亡命するバスク政府の要人輸送にあたりました。
 運良く脱出できる船もある一方、タンカー「ゴベオGobeo」など運の悪いものは、国粋派艦隊に拿捕され、あるいは撃沈されてしまいました。こうした光景は、共和派の港湾都市が陥落するたびに繰り返されていきます。

 この時、共和派海軍の潜水艦3隻が、まだビスケー湾にありました。
 これらは、国粋派の巡洋艦を目標として何度か襲撃を試みています。例えば、「C4」が軽巡「セルベラ」を(6月21日)、「C6」が重巡「バレアレス」を(8月24日)雷撃しています。 しかし、魚雷の不良や低い練度のため一発の命中もなく、逆に爆雷で追い払われてしまいました。

 8月25日にはサンタンデルが陥落。潜水艦「C2」「C4」は、封鎖線を潜って要人を救出すると、フランスへ脱出。駆逐艦「ディエス」も、英国のファルマスFalmouthへ脱出してしまいます。

 10月21日、生き残りの艦艇が集結した共和派にとって北部最後の拠点ヒホンも、激しい砲爆撃の前に陥落。これをもってバスク・アストゥリアス戦線は消滅します。

spain_map4.png

 共和派の残存艦艇の多くも無残な最期を遂げることとなりました。
駆逐艦シスカル1937 潜水艦「C6」は、空襲で損傷し潜航不能となります。一度は脱出を試みて敷設艦「ユピテル」と交戦しますが、最後の魚雷も命中させられず、ヒホンへ帰還して自沈してしまいました。
 駆逐艦「シスカル」(右画像)は、ヒホンの難民救出中に空襲で沈没。この「シスカル」は、英国のジョージ6世の戴冠式に、スペイン代表として参列したこともある艦です。
 水雷艇「T3」は、脱出途中に座礁し浸水。フランスへはたどり着いたものの結局放棄されました。

 フランスのブレストに避難した「C2」「C4」は、幸い抑留は受けないで済みました。ただ、潜入した国粋派の特務部隊に捕獲されそうになる、という危機はあったようです。両艦は、その後、無事にカルタヘナの本隊へ合流しました。

損傷した駆逐艦ホセ・ルイス・ディエス 共和派に残る大西洋唯一の水上艦となった駆逐艦「ディエス」は、英国へ逃れた後に、フランスへ移動していました。
 そして、内戦も終りに近づいた1938年8月27日、本隊への合流を計ります。しかし、ジブラルタル海峡で重巡「カナリアス」、駆逐艦「ウエスカ」「セウタ」の国粋派艦隊に待ち伏せされ、損傷。かろうじて英領ジブラルタルへ遁入します。
 12月30日に再度の突破を試みますが、今度も敷設艦「ブルカノ」等に阻止され、機銃まで撃ち合う接近戦となります。あまりに近くてか、発射した魚雷が「ブルカノ」の甲板を飛び越えたそうです。深く傷ついた「ディエス」はジブラルタル付近で自ら擱座してしまい、ついに英軍によって抑留される事となってしまいました。(左画像は損傷した「ディエス」。艦首左舷に大破孔が見える)
 こうして、ビスケー湾方面の共和派艦隊は、完全に消滅したのです。

 なお、この大西洋・ビスケー湾方面での国粋派海軍による通商破壊は、特設艦艇を中心に内戦終結まで続きました。
貨物船カンタブリア 内戦も終り近い1938年11月2日にも、英国の会社がチャーター中の共和政府貨物船「カンタブリアCantabria」が沈んでいます。食糧輸送中に、仮装巡洋艦「ナディール」こと「シウダード・バレンシア」の砲撃を受け、撃沈されたようです。右画像は「シウダード・バレンシア」から撮影された、哀れな「カンタブリア」の写真。英国クローマーCromer沖7海里付近といわれています。
 2週間後の11月19日にも、同じ「シウダード・バレンシア」によって、共和派の輸送艦「ゲルニカGuernica」が撃沈されています。この「ゲルニカ」は、その名に明らかなように旧バスク海軍の輸送艦でした。(つづく
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