山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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スペイン内戦と海軍(第20回)

7.海上作戦の経過
 (9)戦艦の受難


 ビスケー湾で食料船団を巡る戦いが続いていた頃、地中海でもソ連からの「Y」船団の航海は続いていました。共和派海軍は軽巡「セルバンテス」が大破してしまったため、残る「リベルタード」「メンデス・ヌネス」の2隻が、護衛の中心でした。駆逐艦も忙しく駆け回ります。
 軽快艦艇が護衛に活躍する一方、戦艦「ハイメ1世」は、あまり出番がありませんでした。機動力が低いためだろうと思います。

 1937年4月23日、「ハイメ1世」は、陥落したマラガの艦砲射撃のため、久しぶりに出撃します。ところが、帰路に座礁して損傷してしまいました。
 「ハイメ1世」の損傷を知った国粋派海軍は、2日後に重巡「カナリアス」「バレアレス」をカルタヘナへ出撃させ、止めを刺そうと試みます。しかし、国粋派艦隊がカルタヘナに到着したときには、「ハイメ1世」はアルメリアへ移動しており、作戦は空振りに終わりました。共和派の航空隊が反撃に出ましたが、こちらも戦果を挙げられませんでした。

カタロニア讃歌 (ちくま学芸文庫) 5月3日、共和派支配地のバルセロナBarcelonaで市街戦が発生します。無政府主義者が政府内の権力奪取を図ったとも、共産党の謀略であるとも言われています。一週間ほどで鎮圧されるまでに、2千人の死傷者が出たようです。
 この時、共和政府艦隊は鎮圧部隊の輸送に出動しました。有名な「カタロニア賛歌」にも、わずかに記述があります。

 空襲に苦しむ共和派軍は、モロッコにある国粋派の航空基地を艦砲射撃で破壊しようと企画したこともあるようです。その主役は「ハイメ1世」となるはずでした。しかし、その「ハイメ1世」は5月21日に再び空襲を受け、かえって大破させられてしまいます。
 その後「ハイメ1世」は、カルタヘナで細々と修理を続けましたが、約1ヵ月後の6月17日に謎の爆発事故を起こして着底してしまいました。国粋派の「エスパーニャ」についで、共和派の「ハイメ1世」も退場し、こうしてスペイン海軍の保有する戦艦は全て失われてしまったのです。

 共和派も一方的に空襲を浴びたわけではなく、航空部隊を動員して国粋派の拠点や艦隊を攻撃しています。しかし、航行中の艦船に対する攻撃はほとんど戦果があがりませんでした。もともと洋上作戦を考慮していたイタリア空軍と違い、ソ連人パイロットを中心とした共和派空軍は、移動目標に対応できなかったのです。
 そこで、共和派空軍は、泊地攻撃に狙いを変えます。バレアレス諸島に停泊する国粋派の艦船を攻撃したのです。今度は見事に命中弾を与え、共和派は歓喜します。
deutschland_1937.jpg ところが、実際に命中したのは、国粋派艦隊にではなく、公式には中立のドイツやイタリアの艦船だったのです。5月24日には伊輸送艦「バルレッタ」、26日には独水雷艇「アルバトロス」が被害を受けます。独伊政府の激しい抗議に関わらず、29日にも、イビサ泊地で独装甲艦「ドイッチュラント」が2発の命中を受け、100人を超える死傷者を出してしまいました。(右画像は「ドイッチュラント」艦上での葬送)
 5月31日、装甲艦「シェーア」を中心としたドイツ艦隊が、報復としてアルメリア市街を200発以上砲撃。破壊家屋35棟、死者19人を出します。
 一連の誤爆の原因は、パイロットの艦型識別能力の不足にあるように思われます。世界大戦誘発を意図した故意の爆撃という見方もあるようですが、戦況が依然均衡していたこと、同じころにソ連では大粛清が始まりソ連としては即応態勢とは考えにくいこと、共和派海軍が独伊艦隊との摩擦を非常に恐れていることなどからすると、単純ミスと考えたほうが良さそうです。

 その後も6月中には独軽巡「ライプツィヒ」が「潜水艦の攻撃を受けた」と報告するなど、問題が続きます。
 独伊両国は、不干渉委員会で、安全海域の設置や政府潜水艦の抑留、自衛戦闘の許可、各国連合艦隊による示威行動などを主張。これが認められなかったため、ついに両国は、6月末に海上査察からの離脱を宣言します。同調したポルトガルも陸上査察を中止。不干渉体制は崩壊の危機を迎えます。(つづく
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