山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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帝国の守護者(第11回)

7.おわりに ―リスボンの春―
 ゴアの喪失と前後して、ポルトガルは泥沼の植民地戦争に突入していきます。アンゴラ、モザンビーク、ギニア、東ティモール……。
 サラザール首相は、それでも妥協を認めませんでした。植民地の実情を報じた査察官は公職追放し、愚民政策を維持します。死守命令に背き捕虜となったゴア守備隊は、帰国を禁止され、後に帰国を認めた後も、総督は公職追放になりました。
 植民地戦争に資源が投じられた結果、本国では労働力が不足し、経済・財政状況の悪化を招きます。一時は、軍事費が国家予算の45%に達しました。これは、現在の北朝鮮の推定値を優に上回る割合です。ポルトガルはヨーロッパの最貧国に転落しました。帝国の誇る広大な植民地は、回収不能の不良債権でした。
 度重なるクーデターにも倒れなかったサラザール首相ですが、1968年に椅子から落ちたショックで、脳内出血を起こし病床につきます。代わってマルセロ・カエターノMarcelo Caetano博士が首相に就きましたが、サラザール博士には、この事実は隠されていました。サラザール博士は、自身が首相であると信じたまま、2年後に(主観的には)幸福な最期を遂げます。

 サラザール体制を承継したアメリコ・トマス大統領とカエターノ首相も、1974年に軍事クーデターによって打倒されました。
 このとき、多数の兵力が出動しながらも、ほとんど流血はありませんでした。砲撃命令を受けたフリゲート「ガーゴ・コウチーニョGago Coutinho」ほかの海軍艦艇も、命令を拒否し、砲身を空に向けて沈黙を守ったと言います。血の代わりに、市民が飾ったカーネーションが街を彩ったことから、カーネーション革命と呼ばれることになりました。
 クーデター後、左翼的軍事政権が成立して、全ての植民地の放棄が宣言されました。
 かくてポルトガル海上帝国は、その終焉を迎えたのです。

 これより前、帝国を護ってきた砲艦は、すでに姿を消しつつありました。もはや、少数の砲艦が駐留しても、事態収拾には有効でなくなっていたのでしょう。
 おそらく最後の一隻となったのは、1970年代前半に退役した、1918年製の河川砲艦「テテTete」でした。リンク先の画像が1971年撮影のモザンビークの川に浮かぶ「テテ」最晩年の艦影です。(外伝へ続く


主要参考資料
<書籍>
阿部真隠「波乱万丈のポルトガル史」(泰流選書,1994年)
ウラジミル・セミヨノフ「ラスプラタ」(画報社,1911年)
小田滋「解説 条約集」(三省堂,第9版,2001年)
金七紀男「ポルトガル史(増補版)」(彩流社,2003年)
森島守人「真珠湾・リスボン・東京―続一外交官の回想」(岩波新書,1991年)
「帝国陸海軍補助艦艇」(歴史群像37,学習研究社,2002年)
「Conway's All the World's Fighting Ships 1922-1946」(1980年)
 同「1906-1921」(1985年)、「1860-1905」(1979年)

<ウェブページ>
Marinha Portuguesa - Página Inicial」(葡語)
  ポルトガル海軍公式サイト。海軍広報誌も閲覧可。
Indian Navy」(英語)
  インド海軍公式サイト。
H.M.S.Falcon」(英語)
  英海軍河川砲艦についてのサイト。「マカウ」についてのページ有。
中國軍艦博物館」(中語)
  中国近代海軍についての非常に詳細なサイト。清朝海軍から現代まで。
第1次大戦」(日語)第1次大戦についての高名サイト。前後の各戦争についても。
The Naval Data Base.」(日語)膨大なデータを収録した「近代世界艦船事典」。
野次馬的アジア研究中心」(日語ほか)
  アジア旅行記のほか、「飛び地領土研究会」という素敵なコンテンツも。
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