山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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回転翼の海鳥たち(第16回)

16.ヘリ巡洋艦から汎用フリゲートまで
(承前)この一般水上艦でのヘリコプター利用という流れで一躍脚光を浴びたのが、ヘリコプター巡洋艦と言われる一群の艦でした。
Jeanne dArc その最初の例が、1964年に就役したフランス海軍の「ジャンヌ・ダルクJeanne d'Arc」と思われます。自称こそヘリ空母ですが、それまでの全通甲板型の対潜空母とは異なり、船体前半には普通の上部構造がそびえています。対潜空母としての機能だけでなく、練習艦や強襲揚陸艦としての機能も兼ね備えた汎用母艦です。
 搭載機は、アエロスパシアル「アルーエトAlouette(ひばり)III」の艦載型など8機。捜索装備は磁気探知機MADとレーダーのみで、ソナーは持っていませんでしたが、対潜魚雷のほかに対戦車ミサイルを搭載することも可能で、限定的な対艦攻撃能力も有しています。ちなみにアルーエトIIIの原型のアルーエトIIは、世界で初めて実用化されたタービンエンジン搭載ヘリでした。

 イタリアも1964年に「アンドレア・ドリアAndrea Doria」級ヘリコプター巡洋艦2隻を配備開始し、より大型の「ヴィットリオ・ヴェネトVittorio Veneto」も建造します。各3機と9機のベル212系の中型対潜ヘリを搭載できました。
 英海軍も、「タイガーTiger」級巡洋艦2隻を改装して、ヘリコプター4機の搭載能力を持たせました(1969年再就役)。
 東側ではソ連海軍が、「モスクワ」級ヘリコプター巡洋艦2隻を建造。全通甲板でこそないものの、14機搭載可能と、かなり強力な艦です。
 1970年代に入ってからも、ペルー海軍がオランダ巡洋艦「デ・ロイテルde Ruyter」改装の「アギーレAguirre」を入手したほか、日本の海上自衛隊が「はるな」型2隻と改良型「しらね」型2隻の計4隻を建造しています。日本の4隻はDDHと呼ばれ駆逐艦相当として扱われることが多いですが、イタリアの「ドリア」よりもやや大きく、名前も山岳名というあたり、巡洋艦格に扱ったほうが適切な気がします。
 これらは、「キエフ」「インヴィンシブルInvincible」などのVTOL空母へと発展的に解消していくことになります。この後継者もしばしば巡洋艦を自称しているのは、少し興味深いです。

 こうした中、やや出遅れたのはアメリカでした。米海軍では、巡洋艦に雑用のカマンHOK-1などを搭載してはいましたが、対潜用の機体は積んでいませんでした。
 第二次大戦型の駆逐艦の近代化改装FRAMとして、無人対潜ヘリDASH(追記)の搭載を実施し、新造の「ベルナップBelknap」級巡洋艦などにも搭載する計画でしたが、これは大失敗に終わっています。1960年に駆逐艦「ハゼルウッドHazelwood」での搭載試験を経て、実戦配備したはいいのですが、整備の手間は有人機並の割りに魚雷運搬用以外に使えず、しかも事故率が高かったようです。
 ようやく1960年代末に至って、小型艦用の対潜ヘリシステム「軽空中多目的システムLAMPS」の開発を始めます。これは、母艦とヘリを一体のシステムとして運用しようと言う思想のもので、対潜攻撃はもちろん、早期警戒機としての機能を艦載機に期待したものでした。「エイラートEilath」事件(1967年)での戦訓が加味されていると言われます。
 艦載機には、小型艦載ヘリで実績のあるカマンSH-2「シースプライトSeasprite」が採用されました。それまでのカマン社の機体は、第二次大戦中のドイツ軍機と同じ並列双ローターの特異な姿(追記参照)でしたが、SH-2系は普通の単ローターです。
 1971年に、SH-2D利用のLAMPS-MkIが実用化にこぎつけ、DASHに代わり米海軍の水上艦の多くへと搭載されていくことになります。艦載機には対潜捜索用にソノブイや磁気探知機MADを装備したほか、電子戦装置も搭載されています。ただし、あくまで母艦と組んでの運用のため、吊下ソナーまでは装備していません。
 その後、機体はSH-2Fへと改良され、さらに現在では、シコルスキーSH-60B利用のLAMPS-MkIIIへと更新されています。

 こうして、主要海軍国の間では、駆逐艦・フリゲートに至るまで、ヘリコプター搭載をしてこそ一級の汎用艦という認識が共有されるようになったのでした。(第17回へつづく

追記
 DASHは、対潜魚雷ないし核爆雷を搭載して目標付近で待機し、索敵と攻撃の時差をなくすことを狙って開発されました。ようはアスロックと同じ狙いのものです。
 使用された機体は数種ありました。いずれも二重反転ローター方式で、最大運用距離は40km弱でした。合計で700機以上が生産されましたが、約半数が事故で消耗したと言います。
 なお少数がベトナム戦争中に偵察用に流用されたそうです。
Kmax.png
 SH-2こそ普通の方式ながら、カマン社は今でも並列双ローター型のK-MAXを生産しています。
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