山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

外国人参政権法案と国民の選挙権の希釈の違憲性

 永住外国人などに地方選挙での選挙権を付与する法案が、現実的な話として出てきているようです。法学をちょっとかじった者としては、憲法との関係が気になっています。個人的には、違憲なのではないかと思うところ。
 これまで、外国人の参政権は、憲法上で選挙権などが保障されているかという切り口で、裁判上も何度か争われてきました。判例上は、マクリーン事件(*1)以来の権利性質論をベースに、権利の性質上、参政権も保障されないわけではないが、選挙権・被選挙権は国籍保持者にのみ保障されるという立場が固まっているようです。まっとうな解釈だろうと思います。
 問題は、憲法上の権利ではないとしても、法律で選挙権を積極的に認めることは憲法上許されるのかです。

 この点、最高裁は、地方選挙での選挙権に関する平成7年判決(*2)で、「永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるもの」への地方選挙権付与は立法政策の問題であると述べ、合憲の余地があるとの立場(許容説)を採っています。いわゆる傍論ではありますが、れっきとした多数意見で示された判断として尊重に値するものです(*3)。

 しかし、憲法上保障された国民の選挙権との関係で見た場合、国民の選挙権が希釈される点で、許容説は不当な解釈ではないかと考えます。
 もし外国人の投票を認めると、国民の選挙権がわずかなりとも薄められます。選挙権を有する国民を総体として見ると、国民の選挙権の投票価値の合計が従来は100%だったのが、例えば99%に下がることになります。個々の有権者にとっても、一票の価値が下がります(*4)。
 つまり、憲法上保障された権利の制限を生じますが、これを合憲とするような上手い理屈は無い気がします。最高裁は地方自治と国政の違いをよりどころにするようですが、最高裁自身が前段の「住民」の解釈で述べているように(*5)、地方自治も国の統治機構の一部で、同じ国民主権原理に貫かれている制度であることからすると不自然です。まして、一般的な公共の福祉論の筋で考えると、選挙権が国民主権という憲法の根本原理に関わる重要な権利である一方、対立するのが憲法上の人権でもない外国人の選挙権では、ちと苦しいでしょう。

 平成7年判決が挙げたような限定された要件(例えば、永住資格で当該市町村へ10年以上定住)での選挙権付与なら、そうそう簡単に自治体乗っ取りのようなことにはならないとは思います。
 でも、実害が小さいから簡単に許してよいということではなく、憲法の基本原理に関わる部分として慎重に扱うべきだと思うのです。


注記
*1 最高裁大法廷判決・昭和53年10月4日・民集32巻7号1223頁。

*2 最高裁第三小法廷判決・平成7年2月28日・民集49巻2号639頁。

*3 裁判官の独り言云々と揶揄される補足意見などとは別格。

*4 なお、いわゆる一票の格差の問題とは質的に差があります。一票の格差は憲法上の有権者間の権利配分の問題(平等選挙)ですが、外国人選挙権の場合は憲法上の有権者とそうでない者の間の問題です。外国人参政権の方は、選挙制度設計という手続きの問題では済みません。

*5 以下の部分。「国民主権の原理及びこれに基づく憲法15条1項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、憲法93条2項にいう『住民』とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味する」
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