山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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ちょっと勇魚捕り史

 昨日の記事「鯨飲は原因か」で頂戴したユウ氏のコメントで、『日本の捕鯨の歴史をアピールしてますが、実際調べてみると?なこと多いです』とのご指摘がありました。
 気になって、手元の資料で少しだけ調べたところ、なかなか面白かったので一部ご紹介させて頂きます。

 日本での本格的な捕鯨は、江戸初期頃に起源があるのだそうです。
 始めは「突捕り式」と呼ばれる、小型船から手投げ銛を使って捕獲する方法でした。
 そのうち、有名な紀州太地の辺りで発明されたのが、「網捕り式」という、先にクジラを網で包み込んでから銛を打つ方法です。死ぬと沈んでしまう種類のクジラでも、捕獲することが可能になったのが改良点のようです。

 ただ、太地の捕鯨は、享保頃に最盛期を迎えた後、以後は早くも衰退期に入るようです。二野瓶徳夫「日本漁業近代史」に拠れば、沿岸のクジラ資源の枯渇ないし回遊パターンの変化に原因があるのではないかと言います。
 ネットで調べると米国船の捕鯨拡大や「背美(せみ)流れ」という一大遭難事故が原因と書かれていることが多いです。しかし実際には、それ以前に衰退が始まっていたようで、個人的には新発見でした。

 一方、近代的な捕鯨砲を使った「ノルウェー式」捕鯨の導入のきっかけは、ロシアの南下政策と関係があるそうです。
 日本近海で本格的なノルウェー式捕鯨を開始したのは、ロシア人なのだと言います。ロシア皇太子(後の皇帝ニコライ2世)が訪日した際、随員のカイゼリング伯爵が、鯨資源が豊富なことを知り「太平洋漁業社」を設立。日本向けに鯨肉輸出を始めたのでした。
 この「太平洋漁業社」には、もうひとつ裏の顔があったと言います。それは、一種のスパイ組織でした。ロシア政府の資金を得て、極東方面の測量活動を行っていたようです。極東での南下政策の一端を担っていたわけです。

 「太平洋漁業社」の成功を見て、日本でもいくつかの企業が、ノルウェー式捕鯨に乗り出しました。
 最初に成功したのが、1899年創業の「日本遠洋漁業株式会社」でした。創業者は、ロシアの捕鯨を直接見てきた代議士だそうです。
 日露戦争後には、ロシアからの鹵獲捕鯨船3隻の払い下げを受けるなどし、日本のノルウェー式捕鯨は急速に発展していきます。

 ところが捕鯨の発展は、必ずしも歓迎されなかったようです。
 日本では、クジラは、しばしば漁民の信仰の対象になっていました。クジラが魚群を追いかけて出現することから、クジラの存在が豊漁と結びつき、「恵比寿」と称されたとか。北欧でもニシンの仲間Seiを漁場に呼んでくれるという似たような伝承があるそうで、イワシクジラの英名Sei-whaleの由来となっているとか。
 従来は漂着鯨を授かり物として利用するだけでいたところ、恵比寿様を殺すとは何事かとなったようです。魚が取れなくなったらどうすると。
 さらに、捕鯨に伴う公害も、実質的問題でした。捕鯨業者は、クジラを解体した後、価値の高い皮脂や上級肉のみを利用していました。残りは、付近に海洋投棄していたようです。
 その後、工場を建設して低級肉や骨なども肥料として利用するようになったため、多少は改善されたものの、今度は捕鯨シーズン以外も工場からの廃棄物や騒音、悪臭などが出るようになってしまいました。

 1911年には、1000人以上の漁民が捕鯨事業場を焼き討ちし、死傷34人を出す大惨事まで発生したようです。もともと捕鯨の習慣がなかった地域へ、新興産業の近代捕鯨が乗り込んできたため、生じた悲劇と言えるかもしれません。

 私は、いままで、捕鯨推進派の主張内容のほうが、基本的に真実に近いと思ってきました。
 でも、昨日から、ちょっと調べてみた今の感想としては、推進派・反対派とも相当変なことを言っているのねと言う風に変わってしまいました。

<参考文献>
二野瓶徳夫「日本漁業近代史」(平凡社,1999年)
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