山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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満鉄厚生船の最期

深瀬信千代「満鉄厚生船の最期」
総合評価:★★★☆☆
 第二次世界大戦期の「王道楽土」満州国とソ連の国境である黒竜江、そこには「厚生船」と呼ばれる特別任務の船が運航されていた。任務は、開拓のために各地に入植した人々へ、生活物資とささやかな娯楽を運ぶこと。
 1945年、噂されていたソ連の対日参戦が現実のものとなった時、厚生船は最期の時を迎える。国境地帯に残された乗員たちの苦しい逃避行が始まる。
 満鉄厚生船の元責任者が回想したノンフィクション。
 満州国の統治の実務を握っていた南満州鉄道(満鉄)は、広大な国土の各地に点在する開拓村へと、物資や娯楽をなどのサービスを届ける鉄道を運行していました。そして鉄道だけでなく、黒竜江一帯では同様の任務を担う河船も運航していたのです。それが厚生船です。
 本書には、残念ながら、その具体的な船名や細かなデータは載っていません。喫水の浅い外輪船で、多数の物資と数十人の乗船者を運べたことは読みとれます。船の操縦をする船員のほか、物資の販売業務を行う人員や、娯楽部門の芸人、医療関係者、警備担当の軍人などが乗船したといいます。ロシア系や中国系の乗船者が混じっているのが、「五族協和」の満州国らしく興味深いです。
 河の各地の村々に寄港しては、物資販売や芸人による興業、映画上映会などを催していました。いわば、移動デパートに病院と劇場がくっついたようなもの。日本人の開拓民だけでなく、土着の住民にも歓迎されたといいます。

 本書の内容としては、陸上での逃避行が中心です。日ソ開戦直後に厚生船は自沈処分されてしまいます。もう少し、平時の運航のことを詳しく書いてあるともっと貴重な史料となったと思います。
 陸上での逃避行は、よくある満州での難民体験記とおおむね同じようなものです。ソ連軍の追撃や中国系・朝鮮系の現地住民の襲撃におびえながら、苦しい徒歩移動が続きます。最後はソ連軍に投降することになります。
 珍しいのは、オロチョンと呼ばれる少数民族とのエピソードでしょう。日本軍の特務機関がゲリラ要員としてオロチョンを養成しており、オロチョンは優れた狩猟民族としての能力を発揮して、はじめは筆者らを手助けしてくれます。しかし、まもなく彼らは反乱をおこし、特務機関員を全滅させてしまうのです。

 なお、その名も「厚生船」という記録映画が、1940年代に満鉄映画製作所で撮影されているようです。船の実像について興味がある方は、こちらを調べてみると良いかもしれません。

総合評価:★★★☆☆(題材の珍しさを重視すると★もう一個)
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