山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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サイパン特派員の見た玉砕の島

高橋義樹「サイパン特派員の見た玉砕の島」
                 (光人社NF文庫、2008年)
サイパン特派員の見た玉砕の島―米軍上陸前のマリアナ諸島の実態 (光人社NF文庫)
総合評価:★★★☆☆
 太平洋戦争後期、絶対国防圏と称された決戦地帯マリアナ諸島。しかし、その防備の実態はお寒いものであった。
 著者は、同盟通信社の特派員である従軍記者として、決戦前夜のマリアナ諸島を訪れる。そこで目にしたのは、日露戦争時代の旧式砲や、最前線とは思えないのんびりとした警備隊の将兵であった。期待の新型爆撃機隊が到着したと聞いて撮影に行くと、すぐに別地点に移動して消耗し、ほんの十数機にやせ細ってしまう。
 大丈夫かと不安のうちに、敵機動部隊襲来、輸送船団出現と事態はたちまち緊迫。従軍記者の著者は、輸送任務の潜水艦に便乗して戦場を脱出しようと企てるのだが……。
 堀川潭名義の「あ号作戦」(図書出版社、1978年)改題。
 軍人ではなく、第三者的な従軍記者の視点からマリアナ諸島の戦いを振り返った体験記です。
 著者は、同盟通信社の記者で、海軍従軍記者としてマリアナ諸島に派遣されてきます。米軍来襲の数ヶ月前の時期です。その後、日本側の防備強化の様子を取材しつつマリアナ諸島を転々とし、グアム島にて米軍の上陸を迎えることになりました。従軍記者なので戦闘で死ぬ気は無く、補給物資の隠密輸送と航空機搭乗員救出のためにやってくる潜水艦に便乗させてもらって日本本土へ帰ろうとしますが、潜水艦が現れず失敗。遊兵や避難民と混じって逃亡生活の末、米軍の捕虜となりました。
 本書では、上記の体験のうち、米軍襲来前の時期に力点が置かれています。おそらく米軍上陸後に関しては、堀川潭名義の「悲劇の島―記者の見た玉砕島グアム」(光人社NF文庫、2002年)により詳しく描かれているものと思われます。

 マリアナ担当の海軍従軍記者ということで、サイパン島の第5根拠地隊司令部を振り出しに、同島の第55警備隊、グアム島の第54警備隊、テニアンの第56警備隊、ロタ島の海軍設営隊と諸島内の海軍陸上部隊を広く取り上げてくれます。珍しいところでは、農業用トラクターを大量装備した海軍農耕隊も出てきます。また、マリアナに進出した航空部隊にも取材に行っています。その代わり、陸軍部隊とは、それほど関わりがありません。
 旧式の青銅沿岸砲を指揮する日露戦争生き残りの老特務士官がいたり、短20cm砲(輸送船自衛用の戦時量産型簡易兵器)が最新鋭装備扱いされていたり、絶対国防圏の名ばかりな様子がうかがえる体験を語ってくれます。開戦で現役復帰した老大佐の思いつきで、島民を動員して滑走路を作ったものの、風向を調査していなかったために実用不能なんてトホホなエピソードも。
 筆者は警備隊司令などと個人的に話す機会が多いため、海軍士官たちの個性が感じられるのが面白いです。55警司令の高島三治大佐、54警司令の杉本豊大佐と同副長の鏑木清胤大尉、マリアナ空司令の亀井凱夫などが登場します。

 著者の気ままな生活ぶりも豊富に描かれます。従軍記者ということで司令部に出入りできたり、士官会食に列席して寿司が食えたり、取材移動で飛行艇や輸送機にホイホイ乗せてもらえたりと、かなり厚遇を受けているように思えます。実現しなかったとはいえ、潜水艦による脱出の手配までしてもらえたほどです。
 夜遊びも盛んで、マリアナ諸島の風俗事情もかなり色々と出てきます。わりと露骨な性表現が多く、不潔に感じるかもしれません。Amazonのレビューで微妙な評価をされているのは、この辺りの記述のせいでしょうか。正当な戦史に出てきにくい話であるのは間違いありません。

総合評価:★★★☆☆(一通りマリアナ戦史を調べた後に、変わったものが読みたい方向けか。)
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