山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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空母艦爆隊―艦爆搭乗員死闘の記録

山川新作「空母艦爆隊―艦爆搭乗員死闘の記録」
            (光人社NF文庫、1994年)
空母艦爆隊―艦爆搭乗員死闘の記録 (光人社NF文庫)総合評価:★★★☆☆
 太平洋戦争の主役として戦った日本海軍機動部隊。その艦爆搭乗員として、日中戦争での敵陣爆撃に初陣を飾り、真珠湾攻撃から南太平洋海戦、レイテまで数々の戦闘に参加した下士官パイロットの個人戦記。激しい消耗戦で同僚たちが倒れる中、弾幕を潜りぬけて急降下爆撃一筋、北はアリューシャンから南はガダルカナルまで戦い抜いた第48期操縦練習生の戦歴を振り返る。(画像は新装版)
 初出は今日の話題社から1985年に出た同名の単行本で、本書は1994年に文庫化されたもの。現在は、2004年にNF文庫から出た新装版が入手しやすい物と思われます。単行本は99艦爆の表紙絵(下掲)で内容ぴったりですが、文庫は1994年版・2004年版とも彗星艦爆で、後述のようにまともに彗星で出撃できたのはわずかなあたり、ジャケット詐欺気味です。

 パイロットを志した幼少期の不時着フランス機目撃体験から始まり、本書前半は題名通りの空母航空隊の艦爆搭乗員としての回想が中心です。搭乗母艦は「飛龍」を振り出しに、ついで「加賀」、一時「龍驤」を経て再び「加賀」で日米開戦を迎えます。真珠湾攻撃からラバウル空襲、ダーウィン空襲に参加後、ミッドウェー海戦前に新造の「隼鷹」に移ります。「隼鷹」では、ダッチハーバー攻撃、ガダルカナル方面での飛行場攻撃や対潜哨戒に従事、南太平洋海戦では2回の出撃で空母「ホーネット」などへの命中を報じています。この間の搭乗機は主に99艦爆で、練習機として94艦爆。
 著者は赤痢感染をきっかけに南太平洋海戦後に「隼鷹」を退艦し、陸上航空隊に移ったため、本書後ろ1/3ほどは空母搭乗に関する内容ではありませんのでご注意を。戦列復帰後、宇佐航空隊でしばらく教官を務め、1944年(昭和19年)7月に第3攻撃飛行隊に異動、乗機も新鋭彗星艦爆に変わります。台湾沖航空戦では少数機での夜間攻撃を任されるも、直前で出撃中止。残存機でフィリピンのルソン島に進出しますが、たちまち空襲で機体のほとんどを失い、レイテ攻撃に数機で出るのが精いっぱい、ルソン島への米軍上陸後にアパリから台湾に救出されます。以後は再建のための訓練の日々を送るうちに終戦を迎えました。
 なお、母艦時代の実戦については、当時の記録文書から引用したらしい艦爆隊中心の搭乗割が載っています。

 開戦時には小隊3番機の若年搭乗員だった著者が、たちまち中堅パイロットとなり、後半には飛行隊のベテラン先任下士官として特別扱いされる展開は、搭乗員の消耗の激しさを実感させます。同期の艦爆専修者12人のうち、生きて終戦を迎えたのは著者だけでした。
 また、序盤の栄光から、次第に未帰還機が増加し、後半は地上撃破されて出撃もできずに消耗していく様子にも、日本海軍航空隊の苦闘の経過がよく現れていると思います。特に、教官から実戦部隊に復帰してフィリピンに進出したとき、著者が初めて空襲を地上で体験して戸惑う様に、前半との戦況のギャップの大きさを感じました。

 あまり航空系の戦記を読んだことが無いのですが、そんな私にとって興味深かったエピソードとしては次の辺り。母艦ごとのわずかな大きさの違いによる着艦の容易さの違い。空母での被弾に備えた消火訓練。夜間攻撃の際に、安定性を重視して彗星から99艦爆に乗り換え。機材不足で後半は固定機銃をほとんど搭載していない。終戦直前に、ソ連のウラジオストック攻撃を命じられる。
 また、著者に妙な運がついているようなところも面白かったです。燃料切れ直前で母艦を発見して、着艦と同時にエンジン停止が2回も。ミッドウェー前に「加賀」から転出。南太平洋海戦では、本隊とはぐれたために戦闘機の迎撃を免れる。フィリピンでの敵空母攻撃任務で、出撃直前にエンジン火災で離陸不能となり生きのびる。増加タンクの空中分解で、驚いた敵戦闘機の攻撃が緩む。運が良いのか悪いのか、どちらなのでしょうかね。

総合評価:★★★☆☆(さらっと読めました。)
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