山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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地球の長い午後

ブライアン・W・オールディス「地球の長い午後」
         伊藤典夫訳(原題:“HOTHOUSE”)(ハヤカワ文庫,1977)

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)総合評価:★★★★★
 遠い未来、月の引力に干渉され、ついに地球は自転をやめる。月は地球と向かい合って、永遠の午後のひと時の位置に静止した。
 「昼」の世界は温室と化し、凶暴な木々に覆い尽くされた。その森を支配するのは、動物に相似進化を遂げた植物たち。森の頂からは、巨大な植物蜘蛛「ツナワタリ」が月へと巣を張り、発着していた。
 文明を失くした人類にとって、仲間と呼べる存在はせいぜいシロアリだけ。突如として襲ってくる鳥人が、子供たちをさらっていく。そして、時が来ると、老人たちはツナワタリに運ばれて「天」を目指す。そうなるのがさだめだから。そして、それだけが希望。
 一人の少年が、異端ゆえに群から追放される。一人の少女も行動を共にする。森の外れで二人は、シロアリに寄生した奇妙なキノコに出会う。少年の頭にも取り付いたそれは、自らを「アミガサタケ」と名乗る。アミガサは語る。「お前を助けてあげる。」
 実に奇妙な生態系を持つ未来の地球を舞台にした、5編からなる連作集です。
 その名前の翻訳に苦労したと言う、多数の奇妙奇天烈生物が登場します。「フューチャー・イズ・ワイルド」や「アフターマン」の系統、あるいは「アドバード」などの椎名誠ワールドが好きな方には、たまらないでしょう。(もっとも、その椎名作品自体、おそらく本作のオマージュと思います。公式にどうかは確認していないのであしからず。)
 そのひとつの頂点ともいうべきが、ツナワタリです。有名なSF的仕掛けとして、宇宙船の代わりに宇宙まで届く塔を建てる「軌道エレベータ」(例:「楽園の泉」)というのがありますが、それを、進化の過程で実現してしまうというから驚異です。作中でも、重要な役割を演じます。私は、これが、いままで見た仮想生物中、最高のお気に入りです。

 数マイルの巨大な肉体を有するツナワタリを一方の頂点とすれば、脳だけとなったアミガサは、その対極でしょう。
 「共生」を持ちかけてくるアミガサは、いわば「知恵の実」です。そして、少年はその知恵の実を口にします。アミガサは、少年自身気付かなかった、その脳の深淵に沈んだ人類の記憶を見出し、きわめて「合理的」にその活用を図ってくれます。
 しかし、知恵の実は禁断の果実です。次第に、少年はアミガサに冒されます。

 紆余曲折の末、最後に少年はある決断を下します。
 実は、私自身は、素直にこの決断には納得できなかったのです。故郷を捨ててでも、生き残って広がるということは、やはり生物の最大の目的だと思うのですが。
 よろしければ、読んで考えてみてください。

 まあ、あまり深いことを考えずに、登場生物の姿を想像するだけでも十分に面白い一冊です。クモの巣だらけの地球なんてたまりません。

総合評価:★★★★★(圧倒的な驚異の生態系を楽しんでください。)
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