山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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カリスト―開戦前夜―

 11月の異名は霜月です。
 「霜月騒動」という歴史上の事件があります。鎌倉時代の中期、安達氏が将軍の座を狙っていることが「発覚」して、クーデター未遂事件として鎮圧されたのですが、どうも北条氏による謀略だったらしく、濡れ衣というのが通説のようです。
 名前の通り、この事件が起きたのは旧暦11月霜月のこと。そして、その当時安達氏のトップだった安達泰盛が討たれたのが、今日11月17日(旧暦)だったといいます。
 そんな、720年前の謀略事件の日に、今度は93年後の西暦2098年の謀略事件をお届けします。


谷甲州「カリスト―開戦前夜―」
             (ハヤカワ文庫,1988年)

総合評価:★★★★★
 21世紀末、木星・土星の衛星カリスト等に建設された外惑星植民地は、密かに軍事同盟を結ぶ。仮想敵は、地球の軍事組織「航空宇宙軍」。しかし、宇宙船建造を制限され、経済的にも劣る外惑星軍は、航空宇宙軍には到底及ばない。
 外惑星軍の動きをなぜか察知していた航空宇宙軍は、強力な艦隊を派遣し、軍事施設への査察を要求。これに対し、主戦派のカリスト軍は、限定戦争をも辞さずとし、奇襲作戦を目的とした初の陸戦部隊「陸戦隊」の組織に踏み切る。
 一方、穏健派でカリスト情報部のエリクセン准将は、防諜強化を名目とした陸戦部隊「統合憲兵隊」を編成、独自の動きを見せる。
 同盟国タイタンの動向は。発動される宇宙版石油戦略の効果は。エリクセン准将の狙いは。カリスト軍上層部に潜むスパイ「烏」とは。

 作者の代表作「航空宇宙軍史」シリーズの華、第一次外惑星動乱直前のカリストを描いた作品です。
 「軍史」といっても開戦前なので、派手なドンパチはなく、外交・諜報・謀略と開戦準備の描写が中心です。まあ甲州氏の場合、戦争になってからも、ちっとも派手ではないですが。
 もちろん、いかにもSFらしいシーンもあります。
 冒頭の宇宙港での捕り物にはやられました。やや寂れた普通の空港のホールだったのが、警備員がふわりと天井までジャンプして構造材にしがみついたとたん、すっかりSFになっていて引き込まれてしまいました。

 重要人物は、みなそれぞれなりの信念を持って行動しているので、人物に魅力と実在感があります。
 いかな手段を持っても戦争を回避しなければ、カリストが滅びると考えるエリクセン准将。戦争を疑問視しつつも、あくまで軍備なき独立は無いと考える実直な軍人山下准将。カリスト艦隊司令ミッチナー将軍は……この人は、新しい傘を使ってみたくてしょうがない人。(なぜか彼には熱烈なファンがいるようです。)
 本作では、ひたすら戦争へと事態を誘導する悪役の航空宇宙軍も、実は壮大な使命を帯びているわけです。その辺は、シリーズ最終作「終わりなき索敵」で明らかになるわけですが、それはまた別のお話。

総合評価:★★★★★(信念と謀略。政府・軍内外の駆け引きの緊張感が魅力。)
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