山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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夏への扉

ロバート・A・ハインライン「夏への扉」
 福島正実訳(原題“The Door into Summer”)(ハヤカワ文庫,1979年)

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))総合評価:★★★★★
 ぼくの猫「ピート」こと「護民官ペトロニウス」は、冬になると決まって家中のドアを開ける様にせがんでくる。そのうちのどれかが夏に通じていると信じているのだ。
 そして1970年12月3日、かくいうぼくも夏への扉を探していた。夢だった発明の仕事も順調で、美しい婚約者もいたはずなのに。ついさっきまでは。そう親友と恋人に裏切られ、その全てを失くしてしまったのだ。
 とうとうぼくは、冷凍睡眠の契約をしてしまった。これで全てを忘れられる……。
 だが、それでいいのか。いや、その前に立ち上がって尋常に勝負を挑むべきだ。ピートならそうするように。
 最高傑作SFのひとつではないでしょうか。少なくとも、私の最も好きな作品ではあります。
 内容は、いわゆるタイムマシンものです。タイムマシンの原理にこだわるハードSFではなく、いわば舞台装置としてタイムマシンが使われていきます。

 タイムパラドックス的な伏線があちらこちらと張り巡らされ、物語中盤では、読者は主人公ダンと一緒に、ことの真相を探ることになります。ニヤリとさせられる、小ネタも仕込まれていて飽きません。

 印象に残るのは、主人公がどこまでもへこたれず、前向きで、『強固な決意で武装』しているところです。機械設計者としては、完璧な万能ロボットという目標に向かって、いつも(どの時代でも)妥協することはありません。そして、人生の設計者としても、完璧主義者といっていいほど。自身のあるべき姿を見据え、そこへたどり着く道筋を計画し、それを実行していきます。
 良い意味で理想主義的なのです。時間転位が失敗して、未来に飛ばされるかもしれないというときでも、こう言ってのけます。『そのくらいの危険は冒すさ。ぼくは、三十年前に現在を好いていた以上に、現在、現在が好きだ。いまから三十年先はきっともっと好きになれるだろう。』
 タイムマシンをもっていたら、のび太君でなくとも、ついついズルをして成功したくなると思うのです。しかし、ダンの場合、(多少はズルをしますが)基本的に、自分の力で理想の未来にたどり着きます。

 以前、同じハインライン作の「月は無慈悲な夜の女王」の記事で触れましたが、日本語訳も大変読みやすく、なおかつ味のあるものに仕上がっています。一箇所だけ、多分誤訳だろうと思うところ(p.104『野菜さながら』→植物状態のこと?)がありましたが、それはご愛嬌。
 なお、新潮社から新訳も出ているようです。
 登場する猫のピートもかわいいです。さすが、前書きに『世のなべての猫好きに』とあるだけのことはありますね。
 いちおしです。

総合評価:★★★★★(おとぎ話の様なハッピーエンドもたまにはいいんじゃないかと。)
 
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