山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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タイムスリップ大戦争

 仮想戦記というジャンルの本があります。架空の戦争を題材としたSFのことです。
 架空といっても、たいてい歴史上の“IF”を題材にして、物語が作られています。例えば、「もしも山本五十六がもう一回人生をやり直したら(「紺碧の艦隊」)」とか、「もしも空母中心ではなく戦艦中心で太平洋戦争があったら(「八八艦隊物語」)」といった具合にです。
 仮定を持ち込むことで、なんとか歴史をひっくり返せないか(つまるところ日本を勝たせられないか)という話が人気のようです。逆に、もっと悲惨な仮定を持ち出す話(例:檜山良昭「日本本土決戦」)もありますけれど。

 そして、究極の手段として引っ張り出される“IF”が、SFではおなじみのタイムトリップです。現代日本の最新兵器を持っていけば、勝てるんじゃないの?と考えたわけです。例えば、2度も映画化された「戦国自衛隊」とか、イージス艦が過去に行ってしまう漫画「ジパング」といったところです。
 タイムトリップ型の仮想戦記は、いくつもありますが、その中で一番タイムトリップの規模が大きいのではないのかと思うものを、今日はお送りします。


豊田有恒「タイムスリップ大戦争」
             (角川文庫,1979年)

総合評価:★★★★☆
 小さな地震をきっかけに、奇妙な事件が起こり始める。今は使われていないはずの暗号電文の到着、米国から日本への物資禁輸通告、そして東京湾に突如侵入してきた旧日本海軍の軍艦。政府が達した結論は、日本列島は30数年前の西暦1941年の世界に時間移動したというものだった。
 日本政府は、その圧倒的な技術と軍事力を背景に、歴史の改変に乗り出す。ドイツ・イタリアに撤退を要求し、第二次大戦を終結させる。日本製品は世界市場を席捲。かくして、『日本の支配による平和(パックス・ジャポニカ)』が成立したかに見えたのだが……。
 戦後の仮想戦記の草分けといわれる作品のようです。もっとも、仮想戦記と言っても、それほど細かな戦闘描写はありません。
 それよりも、異時代との接触が生む驚き体験の描写が中心といえるでしょう。帝国軍人とディスコでチャールストンを踊ったり、皇居遥拝を求められたり、自動車の説明をするのに用語が食い違ったり(ハンドルと走行転把)という具合です。
 小ネタは満載です。あるイベントのときに、老女がお題目を唱えていたのにはニヤリとしました。

 他のタイムトリップ作品と比較すると、歴史改変をすることに、まったく躊躇を覚えないでいるのが少々変わっているように感じます。若い頃の自分や家族に会うといったパラドックス的状況は、多少起きるのですが、それ以上に深く突っ込みはしません。
 タイムトリップの原理は、ある程度明らかになります。例えて言うのなら、(以下、反転して読んで下さい)「日本沈没」のような感じかなあと思いました。「日本沈没」は、日本が水平に移動した結果、太平洋に沈む話でしたが、時間軸の過去方向にずれて沈んでしまったというようなイメージです。

 色々な要素が入っていて、個々の要素は薄味な作品ですが、気軽に読める楽しい作品であると思います。

総合評価:★★★★☆(仮想戦記は確かにSFに違いないとわかる。)
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