山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
    --:-- | Top  このエントリーをはてなブックマークに追加

面白南極料理人

 シャクルトンパパーニンの時代の食糧事情を見ると、同じメニューばかりの繰り返しで、さすがに厳しいものを感じました。
 では、現代の極地食糧事情はということで、てがかりとなる一冊。


西村淳「面白南極料理人」
              (新潮文庫,2004年)

面白南極料理人 (新潮文庫)総合評価:★★★★☆
 第38次南極観測隊の「ドーム富士」越冬隊調理担当を務めた、著者が記した回想記。
 「ドーム富士」とは、昭和基地よりさらに奥地に入ること1000kmの観測拠点。標高3800m、ウイルスすらも死滅する平均気温-57度、総員わずか9名の『大雪原の小さな家』である。
 南極観測隊というと、科学者集団のような気がしますが、実際には、その科学者の生活を支える、設営部門の隊員が多数必要になります。
 調理担当の著者も、その一人です。ただし、調理担当といっても、プロの料理人ではなくて、れっきとした海上保安官。ちなみに、第30次観測隊にも、調理担当で参加した経験がある方だそうです。

 調理担当の方の話なので、基本的に食事のエピソードが中心です。出発前の食料準備から始まり、ドームへの移動中の食事、ドームでの日常食、他の隊員による食事当番の話など。特に、誕生日やミッドウィンター祭などのパーティー料理の記述が充実しています。
 この食事メニューがかなりの豪華版で、驚きました。パーティーメニューが多かったためかとも思いますが、伊勢海老味噌汁やら松阪牛ステーキ、あんこう鍋に鴨汁など絢爛。圧巻は、ムール貝のカクテルからすっぽんのコンソメ、フレッシュフォアグラのサラダ、帆立貝のパイ包みに鴨肉まで続くフルコースです。
 一方で、みんな二日酔いの翌日は、サッポロラーメン味噌味という落差も面白いですね。
 食材の充実には、科学の進歩を感じました。ジャガイモから丸のネギ、卵とじ用卵まである冷凍食品の品揃えも凄いですし、水耕栽培でレタスがかなり食べられるのもたいしたものです。
 まあ、逆に言うと、何でも揃ってしまうため、普段の食事とほとんど変わらないということにもなってしまうわけですが。でも、普段の食事が食べられるのが、士気の維持には一番いいのでしょうけど。

 他には、南極で行った遊びの数々も興味深く。金属バットが壊れるソフトボールや、石油缶を溶接して作ったコンロでの氷点下40度のジンギスカンなどなど。
 凍らないように、クーラーボックスにしまってあるレタスなどというのも、南極の生活の雰囲気が伝わってくるようです。

 後は、人間模様が面白おかしく描かれているのですが、閉鎖環境での暗い心理も見え隠れします。特に、ミッドウィンター祭を過ぎた越冬後半戦に入ると、かなりぎくしゃくした部分が出てきて、読んでいて気持ち良くは無いかもしれません。
 前述したようにパーティーが盛んに開かれたのも、そういう暗い部分をなんとか払拭しようという狙いだったようです。

 個人的には、パーティーの食事ではなく、もっと普段の食事の話のほうが読みたかったかなと思う面があります。例えば、筑前煮用の野菜パックと中華ドレッシングで、なんとか酢豚を作ってしまうエピソードが面白かったのですが、ほかにもこういう話があるのなら読んでみたかったですね。
 なお、今月(2006年6月)、「笑う食卓」という続編が出たようです。未読ですが、主に第30次隊のときの体験談がもとになっている模様。

総合評価:★★★★☆(最新科学と手作り感がゴチャ混ぜの濃厚雰囲気)
Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://yamanekobunko.blog52.fc2.com/tb.php/67-b5d64e38
プロフィール

山猫男爵

Author:山猫男爵
ここは「塹壕文庫」「山猫文庫第二壕」に続いて三代目のブログになります。
連絡したいことがある方は、記事のコメント欄か、サイドバー下方のメールフォーム、あるいはツイッターから、お気軽にどうぞ。
Twitter:baron_yamaneko

最新記事
カテゴリ
検索フォーム
参加企画
にほんブログ村 歴史ブログ 近代・現代史(日本史)へ
にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ
リンク
FC2カウンター
メールフォーム

名前:
メール(不要ならそのまま):
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。