山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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南極の自然史―ノトセニア魚類の世界から

 牛肉と称して、牛肉じゃないものを売っていたのはよくありません。許せません。
 生物学的に近い仲間じゃないのに、「タイ」とか「イワシ」と名乗らせるのは、気持ちはわかります。


川口弘一「南極の自然史―ノトセニア魚類の世界から」
                       (東海大学出版会,2005年)
南極の自然史―ノトセニア魚類の世界から
総合評価:★★★★☆
 一見不毛な氷点下の南極にも、独自のそれなりに豊かな生態系が広がっている。その海の主役である魚類グループ「ノトセニア」類に注目して、その釣り方から進化の歴史、多様な適応放散形態までを紹介する科学教養書。
 どうして彼らは氷点下の海でも凍りついてしまわないのか、ちょっと知ってみたくはありませんか? 血も凍らないぞっとする話の始まり始まり。
 コオリイワシ、ライギョダマシ、ボウズハゲギス、ニセハゲギス、ウミタカスズキ、コオリカマス……。みんな南極に住んでいる魚の和名です。キスとかスズキと付いていますが、類縁関係はありません。「ダマシ」とか「ニセ」モノです。
 これら南極特産の魚類グループで最大勢力を誇るのが、本書の主役ノトセニア類なのだそうです。ちなみにこのノトセニアも、ナンキョクカジカという和名がありますが、カジカとは関係ないです。
 身近なところでは、ギンムツことメロという魚がノトセニア科のようです。フライとか粕漬けになっていますね。

 進化の歴史(結論から言うと起源不明)や、標本採取のための釣り(氷に穴をあけて餌はアレを)の話も面白いですが、なんといっても極寒の南極に適応した体の仕組みが、一番面白いと思いました。
 血液中に不凍成分を持ってる云々という話は漠然と知っていたのですが、アミノ酸系の不凍成分で種結晶ができるのを防いで、過冷却状態を生むという仕掛けとまでは初めて読みました。
 さらに不凍成分を持つだけでなく、ほかにも圧力変化による氷点降下を利用したり、赤血球を減らして血液サラサラ効果を実現したり、いろいろな仕掛けが合わさって効率的に生命維持ができているのだとか。ヘモグロビンの無い白い赤血球なんて、聞いただけでわくわくします。おまけに、この赤血球の特殊性を分析することで、進化系統の推定も期待できるのだそうで、うまい具合です。
 血液をいじってしまって酸素供給が十分にできるのか気になったのですが、これも低温状態のおかげで血しょう中への気体溶解度が高まるため、問題ないというので納得です。それでも、さすがに『血の気が少ない』ので、鈍いハンターだとか。
 小難しい化学の話も出てくるのですが、著者の文章が非常に平易で、かつユーモアがあって苦になりません。(追記:著者の川口弘一先生は、残念ながら今年3月に亡くなられました。)

 また、多様なノトセニア類を見ていくと、南極の食物連鎖の全体像も見えてきます。ナンキョクオキアミを基盤に、その養分がどのような物質循環をしていくのか。他の海域と比較しながら読むと、なかなか興味深いです。

総合評価:★★★★☆(さあ南極で太公望したくなりましたね)
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