山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
    --:-- | Top  このエントリーをはてなブックマークに追加

光の雨

 暮れ行く2005年は、戦後60年ということで、世の中では太平洋戦争を振り返ることが多かったように思います。
 日本で「戦後」というと、普通は太平洋戦争後を指します。それ以来、日本は戦争を経験していないということですが、かかる日本で戦争を起こそうとした人々がいます。といっても10年前に世界最終戦争(ハルマゲドン)を企画した方の人々ではなく、それよりも前のほうの話です。
 本日お送りするのは、今日12月15日が誕生日の作者が代弁する、彼らの物語。


立松和平「光の雨」
        (新潮文庫,2001年)

光の雨 (新潮文庫)総合評価:★★★★☆
 予備校生の満也は、アパートの隣室に住む奇妙な老人に問いかけられる。
「君は革命を知っているか」
 玉井潔と名乗る老人は、自分はもうすぐ死ぬと言う。そして、どうかぼくの話を聞いて欲しいと、かつて「革命」を夢見た「兵士」たちが起こした「殲滅戦」について語り始める。
 14人の若者は、なぜ「同志」によって雪山で殺されなければならなかったのか。忌まわしい事件から60年を経た2030年、老人がつむぐ死者たちの言葉によって、その真相が若者に伝えられる。
 世を震撼させた連合赤軍事件を題材に、活動家たちの心理を描いたフィクションです。
 もっとも、「世を震撼させた」と書きつつも、私自身にとっては、全く歴史上の出来事でしかありません。その点では、物語に登場する聞き手の若者たちと同じです。
 ですから、以下に書く感想は、リアルタイムでこの事件を知っている方とは、少々感覚がずれているかもしれません。

 読み終えて最初に感じたのは、存外シンプルな心理であるなあということです。
 あまりに異常で、惨い結果とは裏腹に、それを生み出したのは、皆ずいぶんと普通な若者でした。食べることに執着し、恋愛し、嫉妬し。疑問を感じても、集団心理から口には出せず、自分が総括援助と言う名の異端審問にかかることを恐れる。やがて、虚勢を張り合い、競うように深みに落ち込んでいきます。

 面白い見方だなと思ったのは、銃についての視点です。
 銃砲店から強奪された猟銃は、初めての武器として興奮を持って迎えられます。それは、いつしか完璧な革命主体として神格化されていきます。一方で、その存在は、かえって警察の追及を強める契機となり、活動家たちは追い詰めていくことになります。
 道具の神格化、神を守らんとするがゆえにかえって追い詰められる過程は、手段の目的化という事件の一面の象徴のように感じます。

 単なる小説ではない、ということが、なんとも重い作品でした。
 学生運動とはなんだったのか、つかめたような、相変わらず得体が知れないような。結局よくよくわかっていませんね。

総合評価:★★★★☆(暗い生と性に彩られた後退戦、その60年目の総括)
Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://yamanekobunko.blog52.fc2.com/tb.php/74-9e7c5401
プロフィール

山猫男爵

Author:山猫男爵
ここは「塹壕文庫」「山猫文庫第二壕」に続いて三代目のブログになります。
連絡したいことがある方は、記事のコメント欄か、サイドバー下方のメールフォーム、あるいはツイッターから、お気軽にどうぞ。
Twitter:baron_yamaneko

最新記事
カテゴリ
検索フォーム
参加企画
にほんブログ村 歴史ブログ 近代・現代史(日本史)へ
にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ
リンク
FC2カウンター
メールフォーム

名前:
メール(不要ならそのまま):
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。