山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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エンデュアランス号漂流

アルフレッド・ランシング「エンデュアランス号漂流」
   山本光伸訳(原題“ENDURANCE”) (新潮文庫,2001年)

エンデュアランス号漂流 (新潮文庫)総合評価:★★★★★
 1914年、南極大陸横断に挑む英国シャクルトン探検隊は、帆船エンデュアランス号に乗り込み、南極大陸をめざした。『至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。耐えざる危険。生還の保障なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る。』
 ところが、上陸を目前に、流氷によって囲まれて、航行不能に陥る。船は頑強に圧力に耐え続けたが、9ヵ月目に沈没してしまう。
 氷原に取り残された隊員たち。救援は期待できない。シャクルトン隊長は、自力での生還を決意して、全員を出発させる。総勢28名。目的地は、560km先、緊急備蓄のあるポーレ島へ。
 17ヶ月に及ぶシャクルトン隊の漂流を、隊員の手記や写真など豊富な資料によって描き出したノンフィクション。
 事実は小説より奇なりといいますが、本書の内容は、まさにその「事実」かと思います。
 まず、出発からして、第一次世界大戦の勃発と重なり、中止寸前になります。海相チャーチルの言葉で決行が決まるのですが。
 流氷に乗って一気に前進できたり。別れ別れになったボートが合流できたり。
 そして、一番驚きなのは全員が生還したということでしょう。そう、全員です。海に転落したり、ヒョウアザラシに襲われたりしながらも、全員が生還したというのですから。(なお、おかげで生還者への直接取材も資料となっています。)

 隊員たちがまるで小説のように個性的かつ魅力的です。優秀だけれど、夢見がちでリーダー向きではない船長。気難しい老船大工。子供っぽくドけちな元海兵隊。おまけに密航者が一人。そして、5000人の応募者から、「直感」でこれらの隊員を選び出したのが、隊長のシャクルトン。個性派ぞろいで、よくまとまって無事に帰ってこられたなと思うのですが、それをまとめあげられたのが、シャクルトンの凄さゆえなのでしょうか。
 ある隊員の言葉。『科学的な指導力ならスコット、素早く能率的に旅することにかけてはアムンゼンが抜きん出ている。だが、もしあなたが絶望的な状況にあって、なんら解決策が見いだせないときには、ひざまずいてシャクルトンに祈るがいい』

 また、サバイバル生活の日常描写が、とても生き生きとしていて、興味深いものです。
 様々な食べ物の話。ビスケット、バノック、ペミカン(犬餌用)、ペンギンシチュー、アザラシステーキ……。クリスマスに作った、精一杯のプディング。
 犬ぞりの犬たちとの触れ合いと、そして彼らを殺さなければならなくなった悲しみ。
 トランプに熱中する日々。
 描写が生き生きとしているのは、十分な取材を元にしている成果であると思います。おかげで、とてもリアルに状況を想像することができます。

 人間のしぶとさというものは立派なものだと感じるもよし、リーダーシップとはなにか考えるもよし、極限状態での人間心理を考えてもよし。
 そして、とにかく読み物として面白いのです。おすすめ。

総合評価:★★★★★(不撓不屈。人の力によって起きたひとつの奇跡の記録。)
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