山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
    --:-- | Top  このエントリーをはてなブックマークに追加

私記キスカ撤退

 昨日は主に陸軍側の視点からのキスカ撤退作戦だったので、バランスを取る意味で今日は海軍側から。


阿川弘之「私記キスカ撤退」
           (文春文庫,1988年)

総合評価:★★★★☆
 表題作ほか短編3作、極短編7つからなる短編集。

私記キスカ撤退
 キスカ島(鳴神島)救出任務に直接あたった部隊の、ひとつ上級の司令部にあたる第五艦隊の様子を描くことを趣旨としたノンフィクション。隠密行動に適した濃霧を予測するために、第五艦隊に特別配属された気象予報担当の少尉の苦心ほか。

アッツ紀行
 筆者が取材のため、実際にアッツ島を訪れた際の記録。

山本聯合艦隊司令長官殿
 山本長官宛の手紙と言う形で、彼が軍縮会議の裏で読んでいたという「名著」の正体を「エロ本」だと明かす極短編。

青い眼の長門艦長
 接収された日本海軍最後の戦艦を回航した米海軍大佐と会って。
 表題作は、筆者ご本人も書かれている通り、すでに多数あるキスカ関連書を補足した内容となっています。上述の気象予報士の話のほか、既刊の文献間で食い違う点についての検証など。
 細かいエピソードが拾い集められています。ジャイアントケルプ(ラッコが絡み付いてるあの巨大昆布)オニワカメ(おそらく同様の巨大な海藻)を食べたとか、ソ連軍の暗号を解読して気象データを集めたとか、島の植物を採取して昭和天皇に喜ばれた話等々。

 表題作以外も、旧海軍の様々な側面を感じさせる、細かなエピソードが中心となっています。

 さて、以前にも書いたとおり、筆者は元海軍士官です。それゆえ、陸軍に比して、海軍のリベラルな面を強調されます。
 しかし、一部で批判されるほど海軍をベタほめするものではなく、その不合理な点もきちんと書き記しています。私は、筆者のそうした姿勢に、様々な文献にあたって検討する点とあわせ、好印象を覚えます。

 本書収録の作品は初出がばらばらであるため、一部内容に重複が見受けられるのが残念です。ですが、そこを踏まえてもなお、買って損は無いと思います。

総合評価:★★★★☆(帝国海軍のこぼれ落ちし影を拾い集めて。)
Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://yamanekobunko.blog52.fc2.com/tb.php/79-de9debbc
プロフィール

山猫男爵

Author:山猫男爵
ここは「塹壕文庫」「山猫文庫第二壕」に続いて三代目のブログになります。
連絡したいことがある方は、記事のコメント欄か、サイドバー下方のメールフォーム、あるいはツイッターから、お気軽にどうぞ。
Twitter:baron_yamaneko

最新記事
カテゴリ
検索フォーム
参加企画
にほんブログ村 歴史ブログ 近代・現代史(日本史)へ
にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ
リンク
FC2カウンター
メールフォーム

名前:
メール(不要ならそのまま):
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。