山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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四人の軍令部総長

 最近、戦争ゲームに、はまっています。というと、なんとも人聞きが悪い感じですが、面白いので仕様がない。
 具体的には、スーパーロボット大戦というシリーズの、古いのを引っ張り出して遊んでいます。まだシステムの完成度が低く、不親切設計なのですが、これがどういうわけか、結果として絶妙のゲームバランスを生んでしまってるんです。ジャンルとしては、戦術シミュレーションということになるのでしょう。
 戦争ゲームとひとくくりにしても、戦術レベルなのか、戦略レベルなのかという違いがあります。簡単に言うと、一局面での軍隊と軍隊の勝敗を争う作戦が「戦術」、国と国の勝敗を決める大局的な作戦が「戦略」。究極の外交手段として戦争を活用して、いかに国家の目標を通すか考えるのが戦略。
 例えば、「大戦略」というゲームがありますが、これ看板は嘘で戦術シミュレーションです。戦車の動かし方を考えてるだけですから。戦略を名乗るからには、どういう形で戦争を終わらせるのかを考えて、その結末にいかに相手を追い込むのかを扱わなければならないはずなんですが。本気でそれをゲーム化したら、死ぬほど面倒くさいでしょうけれど。


吉田俊雄「四人の軍令部総長」
             (文春文庫,1991年)

総合評価:★★★★☆
 陸軍参謀本部と並ぶ、海軍側の最高機関「軍令部」。太平洋戦争中、そのトップである軍令部総長を務めた四人の提督を描き、海軍の戦略を分析したノンフィクション。
 著者は、元軍令部員の海軍中佐。
 軍令部を「最高機関」と上で書きましたが、法制度上厳密に言うと、軍令部は命令機関ではなく、最高司令官である天皇の諮問機関に過ぎません。連合艦隊をはじめとした実戦部隊は、軍令部の配下ではなく、天皇に直属する形式になっていたわけです。そのうえ、海軍の場合、人事権の実質は内閣の一員である海軍大臣が別個に握る慣習になっていたので、軍令部と言うのは非常に微妙な存在でした。
 本来の制度設計からすれば、軍令部が戦略面を担当して(天皇に助言して)、それ(天皇の命令=軍令部戦略)に基づいて連合艦隊以下が戦術をめぐらすという形であったのかもしれません。事実、並立する陸軍参謀本部は、そうした機能を果たしています。結果として、まともな戦略であったかはともかく。
 ところが実際には、開戦期と終戦直前の一時期を除き、軍令部は戦略的機能を十分に果たせません。
 この点につき、著者は、軍人は政治・外交に関わるべきではないという思想が、海軍には強かったことが影響していると考えているようです。軍令部作戦課長(海軍No.3、実質No.4にあたる)の記述を、次のように引用しています。『日本軍には作戦研究はあったが、戦争研究がなかった。私たちは、「軍人ハ政治ニ干与スベカラズ」というシツケをいやというほど叩き込まれたが、「これはしまった」と今でも痛感する次第である』と。

 結果として本書の記述も、軍令部が比較的活動した開戦前後と、敗戦直前が中心です。もっとも、これらの時期においても、主導的役割なのは、それぞれ参謀本部と、海軍大臣であったようですが。
 個人的にもっとも興味深かったのは、序章に記された、4人以前の軍令部総長である皇族提督「伏見宮」元帥のことです。皇族軍人と言うと、ロボット的なイメージを抱きがちですが、この方は違ったようです。南北朝期の護良親王並の政治力を振るい、海軍人事や軍縮条約を動かしていきます。

総合評価:★★★★☆(海軍の戦争責任を考えるうえで読んでおくべき)
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