山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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全滅―インパール作戦 戦車支隊の最期

高木俊朗「全滅―インパール作戦 戦車支隊の最期」
                        (文春文庫,1987年)

総合評価:★★★★☆
 最悪の戦場インパールに投入された、同方面唯一の日本軍機甲部隊「戦車第14連隊」の苦闘の進軍と、「ニントウコン」での壊滅までを記録した戦記文学。戦車連隊以外に、配属部隊の記述を多く含む。

 インパール作戦は、太平洋戦争中行われた、インド東部インパール盆地への大規模な侵攻作戦です。山岳地帯ゆえの軽装備と、杜撰な補給計画(素敵なジンギスカン作戦)、制空権の喪失により、3個師団が全滅する大失敗に終わります。玉砕に至るまで命令遵守する日本軍で、唯一の命令無視の撤退が起きたことでも知られます。
 本書は、そのインパール作戦に参加した日本軍戦車部隊の生存者の証言を基にした戦記です。時期的には、作戦前期(といっても予定では作戦完了時期)の昭和19年4月頃から、作戦中止となり撤退戦が始まる同年7月までのこと。
 この間、戦車第14連隊は、「瀬古大隊(歩67連隊第一大隊)」「岩崎大隊(歩154連隊)」などの部隊を併せて、井瀬支隊(臨時編成の混成部隊)を編成して行動しています。前半は侵攻の先鋒として、後半は「ニントウコン」という地点で殿軍(しんがり)として退却援護にあたり、イギリス軍の攻撃の前に連隊長以下全滅してしまいました。(実際には、前線に到着すらできなかった残存部隊がありますが。)
 「岩崎」などの呼称は、もともとは隊長の名前でした。しかし、実際の指揮はたいてい別の人が取っています。正規の隊長は皆戦死してしまい、名前だけが残っているのです。いかに消耗が激しいか、この辺にも表れているかと思います。

 戦車部隊と言うと華々しいイメージですが、本書では日本戦車の悲しい実態が描かれます。
 馬力不足で雨季の泥に埋もれ、その実力を知らない指揮官に無謀な攻撃を強いられ、薄い装甲ゆえにイギリス戦車やバズーカ砲の前に沈黙していきます。その姿は鉄の棺桶。後半は、もはや戦車としては使われず、土に埋めて砲台代わりとなる運命。最後に一両だけ生き残りますが、それはトラック代わりに物資輸送に使われたからでした。
 証言をした戦車兵や著者は、山岳地帯や泥濘地が多い戦場に、戦車を投入したこと自体に疑問を感じているようです。
 ですが、個人的には、戦車の使用自体は誤りではないと思いました。確かに、行動は困難な地域ですが、戦車無しの歩兵を投入するよりはまだましでしょう。本書中でも、イギリス軍側の戦車は、同じ戦場で威力を発揮しています。もっとも、両軍戦車の性能差(特に馬力)も大きいのでしょうけれど。同じ日本軍の戦車でも、鹵獲した米国製M3軽戦車は、十分な機動性を発揮していますから。このM3は、「軽」戦車といいつつも日本製の「中」戦車よりも強力で、切り札扱いされているのがなんとも悲しい。

 読んでいくと、部下に突撃を命じておきながら、自身はあまり勇敢とはいえない指揮官が数多く登場します。
 不気味なのが、「狂った」と部下に噂される指揮官の姿が目立つことです。銃を乱射したり、食料に異常な執着をしたり、飛行機に異常に怯えたり。しかも、そういう人物がそのまま指揮を執り続けるのです。
 小説ですから、誇張もあるのでしょうが、それなりに元になるエピソードがあるようです。どうにも人事がまともには思えません。戦車連隊長は、戦車に乗ったこともない老騎兵大佐ですし。戦車部隊は騎兵部隊の後継には違いないのですが……。

総合評価:★★★★☆(泥まみれの鉄牛の苦闘)
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