山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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海軍めしたき物語

 今度公開される「男たちの大和」という映画は、おもしろいのでしょうかね。なかなか予算はかけているということですが。話し合って「パールハーバー」よりはいいのではないかという結論になりました。


高橋孟「海軍めしたき物語」
          (新潮文庫,1982年)

総合評価:★★★★★
 海軍主計兵として太平洋戦争を戦った経験を、イラストとともに綴った異色の戦記。
 『真珠湾攻撃は昼めし前に終り、ミッドウェイ海戦は昼めし前に始まった。腹が減っては戦は出来ぬ。敵機来襲も味方の砲火も見えぬ戦艦の烹炊所で、ナベカマしゃもじを武器に「めしたき兵」の戦いは今日も続く。』(裏表紙解説より)
 主要乗艦は、戦艦「霧島」と特設砲艦「武昌丸」。
 主計兵というのは、軍隊内で経理や食糧管理を担当する兵士です。軍人だって人間ですから、給料はもらうし、お腹も空くわけで、主計兵が必要になってきます。
 著者の場合は、主に炊事担当をしていました。主計兵といえども兵隊ですから、料理の教育などもすべて軍隊式ですし、普段の生活は厳しく拘束されます。例えば、敬礼の仕方がなっていないと殴られ、味付けがなっていないと巨大なしゃもじで尻を叩かれ、女性からの手紙が来ると音読させられ。

 軍隊生活が豊富に描かれていくのですが、主計兵と言うことで少し変わった内容が出てきます。
 例えば、炊事に欠かせない水は、機関科に言ってタンクに少しずつ貯めてもらいます。しかし、その時になんと賄賂が必要だというのです。「色気をつける」と称して、私物の羊羹を献上したり、備品の砂糖を盗んできたり。
 また、余った麦飯用の麦をこっそり投棄するという話が出てきます。ビタミン補給のため、軍隊では麦飯なのですが、規定どおりのバランスでは美味しくないので、麦を密かに減らしてしまうのだとか。それで、余った麦は、ばれないように海上投棄してしまうというのです。まるで予算消化の道路工事のような話です。

 著者が入隊してからしばらくして太平洋戦争が始まります。著者の乗艦「霧島」は、真珠湾攻撃や太平洋戦争のターニングポイントといわれるミッドウェイ海戦に参加します。
 ところが、主計兵は戦闘中も艦内にこもって、おにぎりを握って竹の皮に包んだり、おしるこを作ったりしているわけです。まったく状況がわからないまま、戦闘は終わってしまいます。著者は、野菜を取りに行った一瞬だけ上甲板に出て、空母が沈む様を見てしまい呆然となりますが、それだけなのです。
 ですが、そんな主計兵だからといって、弾丸が避けてくれるわけでもありません。筆者も、後に移った「武昌丸」が撃沈され、漂流して鮫に足をかまれながらも九死に一生を得るはめになります。戦争は実に平等です。
 このようにちっとも勇ましいところのない主計兵は、戦中も今も、あまりその経験を語ろうとしないと筆者は言います。その中で本書は、戦争の知られざる裏舞台をかいま見せてくれる、大変貴重な一冊だと思います。

総合評価:★★★★★(艦隊の台所事情を描いた、まさに衣食の戦記なり。)
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