山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
    --:-- | Top  このエントリーをはてなブックマークに追加

日本軍の小失敗の研究―現代に生かせる太平洋戦争の教訓

 運命というものを信じたくなってしまう出来事がありました。
 今日紹介する本は、しばらく前から決めていたのですが、なんと今朝の朝刊にもこの本が紹介されていたのです。いやはや、びっくりしました。(気になる方は、読売新聞12月11日15面「愛書日記」をご覧下さい。)


三野正洋「日本軍の小失敗の研究」
              (光人社,2000年)

日本軍の小失敗の研究―現代に生かせる太平洋戦争の教訓 (光人社NF文庫)総合評価:★★★☆☆
 太平洋戦争に日本はなぜ敗れたのか。最大の失敗は「アメリカと戦ったこと」であるのは言うまでもない。しかし、それ以外の「小失敗」について、冷徹な分析を行うことこそ、具体的な教訓を見出すうえでは重要である。このような発想から日本軍の敗因分析を行った一冊。
 主な内容は、補給の軽視、兵器整備の失敗、効果分析の不在と特攻、「専門家」の硬直など。

 前書きの基本的な発想を読んだときは、なかなか面白い本ではないかと感じていました。しかし、読み終わっての感想は、どうも腑に落ちない部分が残るといったことになってしまいました。以下、三点理由を述べます。
 第一に、本書で指摘されている「失敗」は肯けるものも多い一方で、単なる無い物ねだりになってしまっているものが多いように感じます。
 例えば、陸海軍の不協調問題については、確かに肯けます。また、オペレーションリサーチ(作戦の効果分析)の意識が欠けていたことも、実にもっともです。生物学者など多くの分野の民間人も参加して護衛船団方式の研究をしたイギリスの例とは大違いです。これらの問題は、当時でも意識次第で解消できた問題点です。
 一方で、機械化装備の不足や大砲の性能の問題は、軍隊だけの問題点ではありません。ブルドーザーを使わなかったのは馬鹿だ、と批判してみたところで、当時の日本の自動車工業のレベルを考えると、どうしようもありません。戦車の数をそろえるのも四苦八苦、自動車の運転は「特殊技能」という時代です。これでは、ただの無いものねだりです。大砲の性能に関しても、冶金の水準から限界があります。
 確かに、当時の国力からどうしようもなくても、将来への教訓として役立つことなら、指摘する価値はあります。本書の方針にもかなうでしょう。ですが、ただ無いものねだりをされてもしょうがないです。

 第二に乱暴、強引な推測が多いように感じます。
 例えば、日本軍が補給を軽視したことの証拠として、日清戦争での戦病者の多さを挙げています。しかし、これは誤った推論です。戦病者の多くは、当時国民病といわれていた脚気です。これは白米中心の食生活に起因するビタミンB1不足による病気ですが、当時はその原因は判明していませんでした。つまり脚気患者の多発は、補給量不足とは無関係です。補給が重視されていなかったのは事実かもしれませんが。
 ほかにも、陸海軍の戦闘機を統一したら五千機は多く作れた、と単なる当て推量を述べてしまったり、米軍機の武装が統一されていることを褒める際に、統一化されていない機種の事をうまく除外するような比較をしたりします。

 第三に、資料に対する態度が疑問です。
 巻末の参考資料リストを見ると、簡単に手に入るものでも原資料にあたろうという態度があまりうかがえません。「~入門」という本が多いのはどうかと。本書著者紹介の著作リストを見ると、軍事関連だけで26冊もの本が並んでいて、非常に多作な方のようですが、その「秘密」はこの辺にもあるのかもしれないなどと思えてしまいます。

 以上のように、少々、問題点が多い本のように感じます。冒頭で触れた新聞記事で評価されていた神風特攻と反跳爆撃(海面に爆弾をバウンドさせて攻撃する戦法)の比較も、実は疑問点があります。この点については、明日特に取り上げます

総合評価:★★★☆☆(着眼は良いですが。皇軍かく敗れたりと簡単には同意しかねる。)
Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://yamanekobunko.blog52.fc2.com/tb.php/86-e747c9b5
プロフィール

山猫男爵

Author:山猫男爵
ここは「塹壕文庫」「山猫文庫第二壕」に続いて三代目のブログになります。
連絡したいことがある方は、記事のコメント欄か、サイドバー下方のメールフォーム、あるいはツイッターから、お気軽にどうぞ。
Twitter:baron_yamaneko

最新記事
カテゴリ
検索フォーム
参加企画
にほんブログ村 歴史ブログ 近代・現代史(日本史)へ
にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ
リンク
FC2カウンター
メールフォーム

名前:
メール(不要ならそのまま):
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。