山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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スペイン市民戦争

 長々連載した「スペイン内戦と海軍」シリーズのきっかけとなった本を御紹介しておきたいと思います。


ヒュー・トマス「スペイン市民戦争」
 都築忠七訳(原題“THE SPANISH CIVIL WAR”)(みすず書房,1963年)

総合評価:★★★★★
 スペイン内戦を、政治・軍事・外交の様々な視点からまとめた歴史書。内戦に至った経緯から、その終結までを克明に描き出す。
 全2巻。注釈ごとの文献表示のほか、巻末に参考文献一覧、及び若干の統計付属。
 1962年度サマーセット・ムーアSomerset Maugham文学賞、受賞作。(画像は英語版)
 日本でスペイン内戦(あるいはスペイン内乱、スペイン市民戦争)というと、「正義」の人民戦線政府・国際旅団が、「悪」のファシスト・フランコ将軍と戦うイメージであるように思います。あるいは、台頭するナチスドイツが、共産主義ソ連とぶつかった、第二次世界大戦のおまけというイメージかもしれません。(この前哨戦と言う見方自体は、正しいのでしょう。)
 どちらにしても、私の記憶では歴史の教科書の扱いはほんの数行で、ゲルニカ空襲とピカソの話がその半分を占めるという程度です。まあ、分量の関係で、そんなものしか割けないでしょうけれど。
 しかし、実際にはスペイン内戦は、そう単純なものでは無かったようです。本書はそれを教えてくれます。

 本書の構成は、最初の数章を割いて、内戦に登場する諸勢力と社会背景の解説をし、それから、内戦中の事件の記述が始まります。
 最初の数章のおかげで、内戦の複雑性が浮き彫りになります。国内には、自由主義者・社会主義者・ボルシェビキ・無政府主義者・陸軍・治安警備隊・突撃隊・王党派・カトリック教会・ファシスト・バスク独立派等が入り乱れ、しかも、それぞれの中でも派閥が存在します。反乱軍はまだしも、共和政府側では、主導権争いが絶えず続き、数度の武力衝突にまで至ってしまいます。
 そのうえ国外でも、各国がそれぞれの思惑を持って駆け引きをしていくのですから。外交的に見ると、同時期のチェコ併合問題との関連性もあります。

 本書の特色としては、政治史的な面だけでなく、軍事史の面での記述が充実していることが挙げられます。軍事史の面で見ると、スペイン内戦は、第二次世界大戦へ向けた「実戦テスト」として非常に興味深いものがあります。本書はその面でも、たいへん参考になるかと思います。

 著者のヒュー・トマスHugh Thomas(1931~)氏は、英国人の歴史家、小説家です。本書以外には、キューバ近代史やメキシコに関する著作があるようです。
 スペイン内戦関連というと、著者の政治思想(例:共産主義)が極端に強く出ているものが多いですが、本書には、そういう傾向は感じられませんでした。英国の歴史家は優秀だと言われるようですが、トマス氏もその好例かと思います。

 なお、タイトルの『市民戦争』は、“civil-war”の訳語ですが、内戦と訳したほうが適切なようです。“civil”には、反ファシズムの市民が戦ったという意味は全く無く、一つの国民が分裂して戦ったという意味ですから。アメリカ南北戦争も、ルワンダ内戦も“civil-war”です。
 「市民戦争」と呼ぶと、日本語として変な色がついてしまう気がします。
 しかし、本書は、今も同じタイトルで出版されているようです。(版は新しくなったようですが、おそらく内容は同一と思われます。)

総合評価:★★★★★(教科書数行には尽きない歴史がここに。)
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