山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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一九四五年夏 最後の日ソ戦

 一部では有名な「サッカー戦争」が、やっと正式に終わったそうです。
 『「サッカー戦争」に終止符 中米2国、国境画定で署名』(共同通信)
 初めてこの戦争を知ったときは、冗談かと思いました。背景事情が色々あって、サッカーはあくまできっかけだったようですが。

 一方、地球の反対側では、竹島辺りが、きな臭いようです。まさかとは思いますが、サッカー戦争を考えると、何が開戦のきっかけになるか知れたものではないとも思えてきます。

 もうひとつ、サハリン(樺太)で捕虜になった元日本兵の方が、一時帰国を果たしたという、こちらは救いのあるニュース。この方の戦争は、やっと終わったのかもしれません。


中山隆志「一九四五年夏 最後の日ソ戦」
                 (中公文庫,2001年)

一九四五年夏 最後の日ソ戦 (中公文庫)総合評価:★★★★★
 1945年8月15日、日本、ポツダム宣言受諾。
 しかし、終戦を迎えたはずであるこの日、日本の北辺「樺太」では依然として戦闘が続いていた。守備する日本軍と、侵攻したソ連軍との間の戦闘は、千島列島へまで拡大していく……。
 本書は、樺太・千島での細かな戦闘の経過を中心に、戦前の領土問題の経過や、交戦結果の戦後への影響まで、幅広い資料分析により、その戦いの全貌を明らかにしようとするものである。
 本書は、旧東側の一次資料を含む豊富な日ソ双方の史料を基にしています。特に、戦闘経過の詳細を明らかにする上で、敵味方の資料の対照が非常に有効に行われていると感じます。
 戦闘経過の記述に比べ、外交問題としての経緯の部分は、やや手薄なようにも思えますが、基礎知識として一通りのことは押さえてあると言えるのではないでしょうか。

 個人的に興味深かった内容を幾つか挙げておきます。
 まず、純粋に対ソ戦の準備を行っていたわけではなく、対米戦の準備が並行して進められていたこと。例えば、後記の第125連隊も、対ソ開戦までは、対米戦のための配置についていました。二面作戦を強いられたことで、かなりの苦労があったようです。
 また、ソ連側の本音がうかがわれる記述が出てくること。例えば、ソ連側戦史には『ソ連軍の任務は、いかに迅速に樺太南部地区を占領して日本軍隊とその物資財貨の本土引揚を阻止するかということにしぼられた』という記述があるといいます。本当なら、ずいぶんと正直なように思われます。まるで中世の戦争みたいですが。
 日本側の参謀の手記による部分で、ソ連軍人も南千島は日本領だと認識していたかのような描写もあります。
 他にも、初めて聞くような内容が多かったように思います。

 本書によると、ニュースに出ていた一時帰国された方が所属していた歩兵第125連隊は、もともと札幌の部隊で、1943年5月に樺太混成旅団の隷下に入ったようです。樺太混成旅団は、1945年2月末に師団に改編(第88師団)。そして、歩兵第125連隊は、南樺太と北樺太の国境地帯、つまり最前線に配備されることになります。
 連隊は、日ソ開戦直後の8月9日に砲撃を受け始め、ついで侵攻部隊との戦闘に突入しました。詳細は本書の記述を読んで頂きたいですが、避難掩護のため遅滞行動をとった後、連隊主力は8月18日頃に師団命令で武装解除を受けたようです。ただ、隷下部隊の一部600人あまりは、武装解除をせずに部隊を現地解散して、いわば「便衣兵」化しているようです。配属部隊を合わせた連隊の損害は、戦死568名とされます。

 ようやく正式終戦を迎えたサッカー戦争とは異なり、日本とソ連=ロシアとの間には、まだ正式の「平和条約」は結ばれていません。北方領土問題も残っています。一時帰国実現で、ようやく戦いを終えることができた方がいる一方、まだまだ終りの見えない戦いも残っているのですね。

総合評価:★★★★★(日ソ戦研究の権威が、終わらざる戦いを描く。)
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