山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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実録アヘン戦争

 もうあれから5年も経ったのかと、ニュース映像を見ていて思いました。
 「テロとの戦い」という大義のきっかけとなったあの日から。


陳舜臣「実録アヘン戦争」
             (中公新書,1971年)

実録アヘン戦争 (中公文庫)総合評価:★★★★☆
 眠れる獅子と呼ばれた清帝国の実力を露呈し、中国植民地化の発端となったアヘン戦争。
 アヘン没収を強行し開戦を招いた、欽差大臣林則徐。彼は、身の程知らずの暴走者なのか、それとも英明な改革派だったのか。
 中華的外交の有様、「自由貿易」の大義を掲げた英国の立場、清朝内部の権力闘争などをまとめながら、東洋史の一大転換点、その全体像を描き出す。
 1840年、「人は知れ」アヘン戦争始まると、なんて語呂合わせで覚えた記憶がありませんか。教科書でおなじみのアヘン戦争です。考えると、すさまじい名前です。
 授業では、改革派が対外強攻策に出て、かえってカウンターパンチで植民地化と言う、お決まりパターンのひとつ、といった扱いだったでしょうか。林則徐は、真面目だが間抜けといったことになりそうです。
 また、私の使った教科書には、尊大な清朝皇帝の前にかしこまる英国人、というような風刺画が載っていたような気がします。朝貢貿易に拘る中国にイギリスは自由貿易を求めた、などとも書いてあったかもしれません。
 本書は、アヘン戦争に至る前の事実を挙げながら、こうした見方の正否について検討していきます。

 林則徐については、彼を取り巻く改革派官僚たちのエピソードも交え、科挙に受かってから欽差大臣として活動するまでを丁寧に追います。アヘン取締り論議を頂点とした、腐敗した保守派との対立が見ものです。
 著者は、林則徐は、西洋の実力についても無知ではなかったと言います。いち早く西洋海軍技術の導入を進めた点に、後の洋務運動の先取りを指摘します。

 開戦理由については、アヘンと英国の関係を突き詰めることで、「自由貿易」という英国の掲げた大義を否定します。著者は、アヘン問題を口実に開戦しても貿易上のメリットはないと言います。そして、英国のインド統治に本当の理由があるのではないかと、大胆な推理を見せます。
 これに関連して、アヘン貿易の構造を中国側の事情までまとめているのは珍しいかと思います。
 貿易上のメリットがないことを示すために、英国以外のアメリカやポルトガルの動きに注目しているのも、なかなか興味深いです。

 以上の通り、さすがに陳舜臣と思わせるものはあります。
 ただ、戦争より以前のことに詳しい反面、開戦間近となると、急に記述が簡略になってくる気がします。戦闘経過を書く必要はないと思いますが、南京条約交渉の過程や、停戦後のことは、もう少し細かく書いて欲しいと感じました。なんだか、いつのまにか早足になって、食べ足りない印象です。
 それから、林則徐の西洋知識についての記述で、一部矛盾点が見られるような気がします。
 その辺から、評価は五つ星ではなくさせていただきました。

総合評価:★★★★☆(最も不義なる戦争の真の狙いは。一気に読まされるのは確かです。)
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