山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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ノモンハン戦車戦―ロシアの発掘資料から検証するソ連軍対関東軍の封印された戦い

 天高く馬肥ゆる秋と言いたくなるお天気です。鰯雲というのでしょうか、が浮かんでいます。
 「馬肥ゆる」なんて言うと、とてものどかな感じですが、実際には剣呑な状況を意味するらしいですね。収穫期になると、活力つけた異民族騎兵がせめてくるぞってな。
 1939年9月、ポーランド騎兵がドイツ軍に決死の突撃をしている頃ですが、地球の反対モンゴルの草原、騎馬民族の地では、とある死闘が終りを迎えていました。ノモンハン事件です。


マクシム・コロミーエツ「ノモンハン戦車戦」
 小松徳仁(訳)、鈴木邦宏(監修)、(大日本絵画,2005年)

ノモンハン戦車戦―ロシアの発掘資料から検証するソ連軍対関東軍の封印された戦い (独ソ戦車戦シリーズ)総合評価:★★★★★
 事件再評価の動きの中でしばしば言われる「ロシア側資料」を基礎に、ロシア人研究者がまとめた研究書。両軍装甲車両の行動を中心に、ロシア側から見た地上戦の様相、戦訓などを語る、独ソ戦車戦シリーズ第七弾。
 本邦初公開写真多数を含む多数の図版掲載。
 監修者による日本側資料に基づく注釈入り。
 ノモンハン事件(1939年5月~9月)とは、日本とソ連の傀儡国家であった満州・モンゴル間での国境紛争です。日ソ両軍が介入し、合わせて5万人以上の死傷者を出すことになりました。9月17日に停戦協定が結ばれ、ちょうど今頃は、遺体収容が行われていたはずです。
 かつての日本の一方的敗北という通説からは一転、一部では「日本勝利説」(私は、第一線兵団が全滅して国境線から叩きだされてどう考えても負けだと思いますが。)すら言われるようになったノモンハン事件ですが、その再考のきっかけとなってきたロシア側資料の内容がわかる本です。
 モンゴル軍を含めた戦前の配備状況や、ソ連側から見た具体的戦況の推移、戦闘での戦車喪失数の集計表など。

 個人的に面白かった内容をいくつか挙げると、まず、ソ連側「第57特別軍団」のソ連軍全体の中での位置づけ。装甲車旅団を持つ唯一の部隊であるなど、特異な機械化部隊だったようです。
 ついで、ソ連側の戦闘日誌も興味深いです。日本側の手記はこれまでもしばしば引用されてきましたが、ソ連側の前線の実相がつかめるようなものは、なかなかなかったのでは無いでしょうか。例えば、日本のハルハ河渡河攻勢でソ連側の指揮が混乱する様です。日本側からは整然と攻めて来た戦車の大群に見えても、実は状況も知らされないまま逐次投入された部隊だったりします。日本戦車に対峙した反応も面白いですね。
 最後にまとめられている、ソ連側の戦訓も重要な資料でしょう。ソ連側から見た日本兵の戦闘様式や、日本軍火器の対戦車威力など。対戦車威力は、おそらく鹵獲兵器で実験したデータが含まれています。言われている火炎瓶の効果はほとんどなく、速射砲や機関砲による戦車損害が多いようです。

 そして、文章も興味深いですが、それ以上なのが挿入図版でしょう。
 ソ連側の戦場写真はもとより、日本側撮影の写真も珍しいものがあります。満州軍のラクダ輸送隊や、師団捜索隊の92式重装甲車、鹵獲された日本兵器群など。
 ソ連側の実際の戦況図も載っています。部隊記号など珍しいです。

 日本版で加えられた監修注が充実しているのも良いです。ソ連側では、しばしば誇大な戦果報告になっている部分を、実際の損害報告を添えて注意するなど。
 ただ、写真に添えられた監修注には一部おかしな箇所(写真33と69)があります。おそらく写真の取り違えと思われますので、要注意です。それ以外は出色の出来でしょう。

総合評価:★★★★★(独ソ戦車戦というシリーズ名は嘘ですが)
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