山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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フランコ スペイン現代史の迷路

色摩力夫「フランコ スペイン現代史の迷路」
                (中央公論新社,2000年)

フランコ スペイン現代史の迷路 (中公叢書)総合評価:★★★★★
 時にヒトラーと並ぶ極悪ファシストとされ、また一方では卓越した外交手腕を誇る天才のようにも描かれる、独裁者フランコ将軍。しかし、それらの見方は、いずれも「神話」に過ぎないのではないか。
 一見難解な過程を辿るフランコの人生を、元外交官の著者が出生から丹念に追い、同時にスペイン現代史の断章「フランコ時代」の実体にも迫る。

 本書タイトルの「迷路」というのは、フランコの政治的・外交的選択の外面を言っています。スペイン内戦では「ファシスト」でありながら、第二次大戦では中立を選びチャーチルに感謝されたり。それでいながら、戦後は孤立し、王政復古を認め。確かに複雑です。
 ところが、著者は、フランコ個人は『面白くもおかしくも無い秀才』軍人とやや切り捨てるような表現をします。結果としての業績は優れたものとしながらも、彼の人物自体には別に冷静な観察を加えます。
 どうして一見複雑な行動過程をとることになったのか。
 著者は、当時のスペインの複雑な状況の中で、国益と国威という一本線だけを追及した結果とみるようです。高度の知性を欠き、それゆえに、理論(例えばファシズム)などには興味がなく、現実的な妥協と調整を基礎とした試行錯誤だけを行ったというのです。細かく描かれたフランコの行動を見ていくと、著者の見解には納得させられる部分が多いと感じました。
 フランコの周りに登場する共和国政府の優れた知識人たちや、理論家のファシスト・共産主義者たちと対比して読んでいくと、なお興味深いと思います。

 次第に老いていくフランコの姿も、なかなか興味深いと思います。
 史上最年少の将軍となるなど若さを武器にしていたフランコが、気力体力の衰えと共に弱さを見せていきます。年下の夫人に押され、若き皇太子ファン・カルロスの存在に対抗できなくなっていったようです。
 時代や政策の変化を理解しきれない姿は、哀愁すら漂います。

 また本書は、フランコ個人についてだけでなく、スペイン史を見る上でも、大変参考になると思います。著者は、当時のスペイン駐在経験もある元外交官で、その経験を生かし、鋭く重要な歴史事実を切り出してくれています。
 スペイン内戦の「神話」を、反例を挙げて砕いていくのが見事です。フランコが反乱の首謀者という神話の否定や、戦時国際法の視点から見たゲルニカの真実、第二次大戦の前哨戦という評価への疑問などが論じられます。
 個人的には、カトリック教会・ローマ法王庁との交渉が、詳しく書かれていたのが、特に面白い部分でした。スペインを理解するうえで、カトリック勢力についての理解は、欠かせないものと思います。

総合評価:★★★★★(外交のプロらしい鋭い切れ味。)
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