山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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スペイン内戦と海軍(第5回)

3.内戦に参加したスペイン艦艇の一覧(承前)
(2)駆逐艦の部

「チュルカChurruca」級駆逐艦:保有数12+2隻(戦没艦2隻。ほか、戦前に2隻を輸出、戦後完成2隻)
Destructor_Almirante_Valdes_(AV).jpg 英「スコットScott」級嚮導駆逐艦の改型。1・2番艦の「チュルカ」「ガリアノ」(各初代)は、アルゼンチンに戦前に輸出されている。開戦時に4隻が建造中で、うち2隻が戦時中竣工。「チュルカ」(2代)が開戦直後に一時的に国粋派に協力したのと、撃沈された「シスカル」が浮揚されて末期の2ヶ月ほど国粋派に使用された以外、全艦が共和派に所属している。
Destructor_Jorge_Juan_(JJ).jpg 竣工順に、「サンチェス・バルカイステギSanchez Barcaiztegui」、「ホセ・ルイス・ディエスJosé Luíz Díez」、「アルミランテ・フェランデスA. Ferrandiz」、「レパントLepanto」、「チュルカ」(2代)、「アルカラ・ガリアノAlcalá Galiano」(2代)、「アルミランテ・バルデスA. Valdés」(右上画像)、「アルミランテ・アンテケラA. Antequera」、「アルミランテ・ミランダA. Miranda」、「シスカルCiscar」、「エスカーニョEscaño」、「グラビナGravina」、「ホルヘ・フアンJorge Juan」(1937年就役・左画像)、「ウリョアUlloa」(1937年就役)
 後期7隻は前部マストの三脚檣化・主砲架などを改正され、うち「アンテケラ」を除く6隻は主砲1門を減らして高射砲等に替えて竣工。前期型でも、内戦中に同様の改装をしたものがある。減らした分の主砲は、建造中の艦に共食い的に流用したのではないかと思われる。
 満載排水量1800t(後期型1914t)、速力36kt
 120mm×5(後期型は4、一部は102mmで代替?)、76mmAA×1(後期型の一部2)、機銃若干、魚雷III×2

「アルセドAlsedo」級駆逐艦:保有数3隻(戦没艦なし)
Destructor_Alsedo.jpg 英前大戦型「ニムロッドNimrod」級嚮導駆逐艦の縮小型。
 「アルセド」「ラサガLazaga」は、政府軍に所属も不活発。
 「ベラスコVelasco」は、反乱軍が当初保有した唯一の駆逐艦として活躍。
 満載排水量1315t、速力34kt、102mm×3、47mmAA×2、魚雷III×2

「セウタCeuta」級駆逐艦:2隻(戦没艦なし)
 1937年10月に、イタリアから反乱軍に譲渡された、前大戦型嚮導駆逐艦。
 「セウタ」(旧「アキラAquila」)と「メリリャMelilla」(旧「ファルコFalco」)の2隻。
 煙突を追加するなどして、「ベラスコ」に擬装していた。
 満載排水量1800t、速力34kt、120mm×4、76mmAA×2、魚雷II×4

「ウエスカHuesca」級駆逐艦:2隻(戦没艦なし)
Destructor_Huesca1937.jpg 1937年7月に、イタリア海軍から国粋派に譲渡された、前大戦型嚮導駆逐艦。
 「ウエスカ」(旧「ジュグリエルモ・ペーペGuglielmo pepe」・右画像)、「テルエルTeruel」(旧「アレッサンドロ・ポエリョAlessandro Poerio」)の2隻。
 満載排水量1028t、速力32kt、102mm×4、37mmAA×2、魚雷II×2

第6回に続く

スペイン内戦と海軍(第6回)

3.内戦に参加したスペイン艦艇の一覧(承前)
(3)潜水艦の部

「B」級潜水艦:保有数6隻(全艦戦没)
 「B1」(衝突事故で大破放棄)、「B2」(敗戦時自沈?)「B3」(衝突事故?)、「B4」(座礁)、「B5」(空襲?)、「B6」(「ベラスコ」ほかの砲撃)の全艦を内戦中に喪失。
 排水量556t(水中740t)、16kt(水中10.5kt)、76mmAA×1
 発射管:前×2、後×2(魚雷搭載数:8)

「C」級潜水艦:保有数6隻(戦没艦4隻)
c5.jpg 「C3」(独潜「U34」の雷撃)、「C5」(右画像・サボタージュによる?)、「C6」(ヒホンで自沈)は、内戦中に沈没。「C1」は一度空襲で沈没後一週間で浮揚も、停戦まで使用不能。
 スペイン海軍の主力潜水艦。より新型の「D」級は建造中で、内戦後の完成に終わった。
 排水量925t(水中1144t)、16.5kt(水中8.5kt)、76mmAA×1
 発射管:前×4、後×2(魚雷搭載数:10)

「ヘネラル・モラGeneral Mola」級潜水艦:保有数2隻(戦没艦なし)
 1937年4月にイタリアより反乱軍へ譲渡された、旧「アルキメーデArchimede」級大型潜。
 「モラ」(旧「アルキメーデ」)、「ヘネラル・サンフルホG. Sanjurjo」(旧「エヴァンジェリスタ・トリチェリEvangelista Torriceli」)の2隻。
 「サンフルホ」は、イタリア艦時代にも、政府軽巡「セルバンテス」大破などの戦果を挙げている。
 なお、このほか同型2隻「ガリレオ・ガリレイGalileo Galilei」「ガリレオ・フェラリスGalileo Ferraris」が、伊海軍でスペイン艦に擬装した名前で行動しているようである。
 排水量985t(水中1259t)、速力17kt(水中8kt)、100mm×2
 発射管:前×4、後×4(魚雷搭載数:16)

「ヘネラル・ロペスG. Ropez」級潜水艦:保有数2隻(戦没艦なし)
 イタリアより貸与された「ペルラPerla」級中型潜。1936年就役の新鋭艦。おそらく、実際には伊海軍が運用。戦後返却。
 「ロペス」(伊「イリデIride」)、「アグイラル・タブラダAguilar Tablada」(伊「オニーチェOnice」)の2隻。
 「ロペス」は、イタリア艦時代にもかなりの戦果を挙げている。
 排水量680t(水中844t)、速力14kt(水中7.5kt)、102mm×1
 発射管:前×4、後×2(魚雷搭載数:不明)

第7回に続く

スペイン内戦と海軍(第7回)

3.内戦に参加したスペイン艦艇の一覧(承前)
(4)小艦艇・特務艦の部

「カノーバス・デル・カスティーリョCánovas del Castillo」級スループ:保有数3隻(戦没艦1隻。但し復旧)
dato.jpg スペイン海軍の正式類別では砲艦Cañoneroで、いわゆる植民地警備スループの類である。メキシコ海軍に準同型艦3隻が輸出され、2001年まで海軍籍にあった。
 「エデュアルド・ダトEduardo Dato」(右画像)は国粋派所属。序盤の陸兵輸送や船団護衛に従事するが、戦艦「ハイメ1世」に撃沈される。浮揚再就役。
 他の2隻「カノーバス」「カナレハスCanalejas」も共和派所属。一部の兵装を、特設艦艇用に供出したという記述があるが、その後の時期でも普通に活動は続いており真偽不明。
 満載排水量1335t、速力15kt、102mm×4、76mmAA×2

「レカルデRecalde」級スループ:保有数2隻(戦没艦1隻。ほか戦前に退役2隻)
 警備スループ。内戦時現役は、「ラヤLaya」「ラウリアLauria」。
 「ラヤ」は共和派に所属し、ドイツ機の空襲で撃沈される(1938年6月15日)。
 「ラウリア」は国粋派所属。ほとんど活動せず。
 満載排水量811t、速力14kt、76mm×4

「カルボ・ソテロCalvo Sotelo」級スループ:保有数1隻(内戦中完成)
calvo_sotelo.jpg 国粋派所属。本来はメキシコ海軍艦「サカテカスZacatecas」として発注を受けて建造中だったが、内戦勃発によりカディスで接収。1938年就役。艦名の由来は、その暗殺が内戦のきっかけとなった右翼政治家の名である。
 なお、同型艦「ドゥランゴDurango」は内戦直前にメキシコ海軍に引き渡され、2001年まで海軍籍に健在。内戦中には、密かに政府軍への援助物資輸送に使われたようである。
 満載排水量2000t、速力20kt、102mm×4、76mmAA×2

「T1」級水雷艇:保有数13隻(ほか退役済9隻)
portmao.jpg 第一次大戦前に建造開始された旧式水雷艇。一部は退役済で、現役艦も稼働状態微妙。内戦前半には比較的活発に行動し、哨戒や墜落機の乗員救出などに従事。画像は1920年代にメノルカ島マオン軍港に碇泊中の同級水雷艇。
 共和派保有は「T3」「T4」「T14」「T16」「T17」「T20」「T21」「T22」の8隻か。「T3」はフランスへ脱出時に座礁放棄。「T14」は火災放棄。「T20」~「T22」は、敗戦時自沈。
 国粋派保有は「T2」「T7」「T9」「T18」「T19」の5隻か。一部資料では「T8」もあるが、退役済と思われる。「T2」は座礁放棄。
 満載排水量180t、速力26kt、47mm×3

「ユピテルJúpiter」級敷設艦:保有数4隻(全て内戦中竣工)
 「ユピテル」(1937.1就役)、「マルテMarte」(1938就役)、「ネプチューノNeptuno」(1939就役)、「ブルカノVulcano」(1937.1就役)。
 全艦が、エル・フェロルで未成状態のまま国粋派に捕獲される。
 満載排水量2600t、速力18.5kt、120(102?)mm×4、76mmAA×2、機雷264基

「デダロDedalo」級水上機母艦(内戦時退役済。戦没)
dedalo.jpg 独商船「ノイエンフェルスNeuenfels」改装。リーフ戦争では実戦で活躍したが、内戦前の1935年には退役して係留状態となっており、内戦中の1937年7月18日に国粋派側の空襲を受け沈没。画像は現役時代の写真で、甲板に並ぶのはフェリクストウFelixstowe F.3飛行艇。艦名の由来は、ギリシア神話のダイダロス(イカロスの父で、羽を発明して共に空を飛んだ)。
 基準排水量10800t(9900t?)、速力10kt、105mm×4、57mmAA×2
 搭載機:水上機×20機以上、係留気球×2、飛行船係留設備×1

「カングロKanguro」級潜水艦救難艦:保有数1隻(戦没艦なし)
潜水艦救難艦カングロ 1920年就役、1943年退役。オランダで建造の双胴型救難艦。共和派所属。
 満載排水量2750t、速力10knt

 このほかに各種小艦艇が存在する。以下、簡単に触れる。
 沿岸警備用の排水量350~800tの巡視船(日本語文献では「海防艦」「大型砲艦」などとも表記)を、共和派4隻、国粋派5隻保有。多くは、旧英海軍の哨戒トロール。植民地モロッコの地名にちなむ艦名を持つ。共和派は2隻を軽巡「セルベラ」に撃沈され、1隻はマラガ陥落時に自沈(国粋派が浮揚)。国粋派も戦艦「ハイメ1世」に1隻を沈められている(後、浮揚)。
 測量艦を共和派が2隻、国粋派が1隻保有。102mm×2程度の武装があるため、警備任務などに使用。共和派は全滅(空襲1隻、マラガで自沈1隻)。
 排水量800tの航洋曳船1隻を共和派が保有。武装76mm×1等。空襲により沈没。
 その他、漁業保護艇や哨戒艇、小型掃海艇など。
 また、魚雷艇5隻がドイツから、4隻がイタリアから、国粋派に供与されている(うち2隻は、内戦中事故で喪失)。同様に、ソ連製魚雷艇4隻が、乗員ごと共和派に供与されている(戦没2隻、鹵獲2隻)。魚雷艇の詳細は第7.5回参照

 なお一部資料では、共和派に砲艦「レミーヒオ・ベルドア少佐Remigio Verdoa」という艦名が見られるが、これはフェリー改造の特設敷設艦。1939年3月、空襲によりカルタヘナで沈没。戦後、復旧。

第7.5回へ続く

スペイン内戦と海軍(第7.5回)

3.内戦に参加したスペイン艦艇の一覧(承前)
(5)魚雷艇の部

 スペイン内戦中、共和派・国粋派の両陣営とも、外国から供与を受けた魚雷艇Lancha-torpederaを実戦に投入しています。共和派はソ連から4隻。国粋派はイタリアから4隻と、ドイツから5隻。
 内戦中のこれらの高速艇たちの戦歴を、調べた範囲で簡単にまとめておきたいと思います。

ア.共和派の魚雷艇
 共和派は、ソ連から「G5」型魚雷艇4隻の供与を受けました。おそらく、乗員もソ連から派遣されたものと思われます。これらは、1937年の5月~6月に、「カーボ・サント・トーメ」ともう一隻の輸送船により2度に分けて到着しました。
 共和派海軍は、4隻に対し「11号」「21号」「31号」「41号」という呼称をつけています。
KirovTKA-G-5-1940.jpg
「G5」型は第二次大戦時のソ連の主力魚雷艇のひとつです。右画像は、ソ連海軍で運用中のG5型魚雷艇(手前)を捉えた写真で、背景に写っているのは重巡「キーロフ」です。
 排水量18t、速力51kt、航続距離200浬、魚雷×2or爆雷×2、7.9mmMG×2

 共和派は、主に大型艦の襲撃用として魚雷艇を使用するつもりだったようです。国粋派艦隊が艦砲射撃に襲来したときに、数度に渡り迎撃にあたっています。一度は至近距離からの軽巡「セルベラ」雷撃に成功したとも言いますが、命中は確認されていません。
 最大の見せ場となるはずだったのは、1938年3月5日に計画されたマリョルカ島パルマ泊地の夜襲ですが、これは悪天候を理由に中止になっています。ただ、この作戦が、内戦中最大の海戦であるパロス岬沖海戦のきっかけではあるのですが。もちろん、パロス岬沖海戦自体には、魚雷艇は参加していません。
 内戦末期には、分断されたバレンシア・カタロニア間の連絡に使用されました。

 内戦中の「活躍」を結果的に見ると、なんの戦果も無いまま2隻が空襲で失われただけでした(1937年11月、1938年7月30日)。
 残りの2隻もバルセロナ港内で空襲により損傷し、放棄されました。この2隻は国粋派に鹵獲され、内戦後のフランコ政権海軍に「LT15」「LT16」として使用されています。


イ.国粋派の魚雷艇
e03Candido perez 435 魚雷艇の本家イタリアは、MAS系の魚雷艇4隻を供与しました。第一次大戦型の中古艇「ナポレスNapoles」(旧「MAS100」)、「シシリアSicilia」(旧「MAS223」)と、新型の「カンディド・ペレスCandido Perez」(旧「MAS435」)、「ハビエル・キロガJavier Quiroga」(旧「MAS436」)。

「MAS435」「MAS436」は、1931年建造で、第一次大戦型の改良型でした。右画像は「MAS435」の写真。
 満載排水量14t、速力40kt(公称)、航続距離125浬、魚雷×2、7.5mmMG×1

 このうちの新型2隻については、当初はイタリア海軍所属のまま、国粋派に協力していました。供与潜水艦の場合と類似しています。イタリア海軍時代に、駆逐艦に曳航されてマラガ泊地の攻撃を試みていますが、波浪大のため作戦を中止しています。
 4隻とも、1937年1月~3月に国粋派海軍に引き渡されます。
 引渡後は、カディス港などジブラルタル海峡付近での警備任務についていますが、航洋性の不足などから活動は不活発です。マラガに共和派駆逐艦が艦砲射撃に来た際に、迎撃に出ているのが唯一の大きな行動のようです。このときも波浪のため、雷撃できませんでした。ただし、共和派艦隊は、魚雷艇の出現に脅威を感じ撤退したようです。穏やかな地中海といっても、ジブラルタル海峡付近の海域では、小型の魚雷艇の活動は無理があったように思われます。
 なお、「キロガ」は、僚艇と衝突して沈没しています(1937年5月6日)。
 生存した3隻は内戦後に、「LT17」(「ナポレス」)、「LT18」(「シシリア」)、「LT19」(「ペレス」)と改名しました。

 もう一方のドイツからは、内戦中に少なくとも5隻の魚雷艇が供与されています。第二次大戦で勇名をはせるドイツ魚雷艇Sボートですが、そのうちの最初の5隻がそれです。これら5隻は日中戦争中の中国に売却される予定でしたが、途中からスペインに振り向けられています。

「S1」は、ドイツ海軍が建造した最初の魚雷艇です。試作艇と言っていいでしょう。
 満載排水量52t、速力34kt、航続距離600浬(?)、魚雷×2、20mmMG×1、7.7mm×1

「S2」~「S5」は、初の量産型です。「S1」と基本設計は同一。左下画像は「S5」。
 満載排水量58t、速力34kt、航続距離2000浬、兵装は同じ。

e010LT14,S5 最初の生産型ということで、これらはまだ多くのトラブルを抱えていました。ドイツ魚雷艇特有の、船体と一体化した魚雷発射管もまだ使われておらず、比較的低い甲板上に発射管が載っています。
 しかし、大型の船体に大きな航続力、機雷敷設能力といった後のSボートと共通する性格は有していました。こうした特長のおかげで、ドイツ製魚雷艇は比較的活躍をすることができました。

 36年11月と37年3月に2隻ずつ、「S1」~「S4」が引き渡され、番号順に「バダホスBadajoz」「ファランヘFalange」「オビエド Oviedo」「レケッテRequete」と名付けられました。残りの1隻「トレドToledo」(旧「S5」)の引渡は、内戦終結直前の39年2月になります。
 先に引き渡された4隻は、機雷敷設任務を中心に、輸送船襲撃や哨戒任務等を行いました。駆逐艦不足を補うため、爆雷を搭載して船団や大型艦の対潜護衛任務にも駆りだされています。まるで、第二次大戦時のドイツ海軍での作戦行動を予言するかのようにも思えます。
 魚雷艇が敷設した機雷による可能性がある戦果としては、貨物船1隻撃沈のほか、英駆逐艦「ハンター」の損傷があるようです。
 逆に受けた損害は、「オビエド」が、ビナロス港停泊中に空襲で大破着底させられています(戦後、復旧)。また、「ファランヘ」は、エンジントラブルから火災発生して、完全喪失となってしまいました。
 復旧した「オビエド」を含め、内戦を生き残った4隻は、旧番号順に「LT12」「LT13」「LT11」「LT14」となっています。

 なお、このほか、「S6」も内戦終結直後に引き渡されているようです。「S6」は、新型の機関部を搭載した高性能艇として開発されたものですが、実際には完全な失敗作だった艇です。おそらく「LT20」となったものと思われます。


ウ.小括
 結局のところ、両軍合わせ13隻の魚雷艇は、あまり目に見える戦果は無いまま、後に復旧したものも含め7隻が戦闘力を失っています。魚雷艇自体が、設計・運用とも未だ成熟しない新兵器だったともいえるかもしれません。
 しかし、この結果まったくの役立たずとスペイン海軍に判定されたかというと、そうではなかったようです。内戦直後の艦隊再建プランには、すでに魚雷艇の建造が挙がっています。実際にも、ドイツからの援助により、洗練された魚雷艇「S38」型が供与(「LT21」~「LT26」)され、ライセンス生産(「LT27」~「LT32」)もされています。イタリアには声がかからなかったようですが、これはやはり航洋性や汎用性のなさが問題視されたのでしょうか。
 最後に、内戦を生き延び改名された魚雷艇のその後ですが、これらはドイツからの新しい供与艇が到着するのと入れ替わる様に、急速に退役しました。1946年に「LT20」までは全て除籍となったようです。

第8回へ続く

スペイン内戦と海軍(第8回)

3.内戦に参加したスペイン艦艇の一覧(承前)
(6)特設艦艇の部

 前回までのような正規の艦艇のほか、共和派・国粋派とも、多数の民間船舶を徴用して補助艦艇として使用していました。
 例えば、共和派陣営のバスク地方政府は正規艦艇を持たなかったのですが、食料輸入の海上交通維持のため、海軍力を必要としました。そこで、4隻の 1000t級トロール漁船を徴用して特設砲艦としたほか、300t級の大型哨戒艇として3隻、掃海艇や小型哨戒艇として約40隻の漁船を徴用し改造したようです。これらは、大型のものでも102mm砲を2門積んだ程度でしたが、国粋派の正規艦艇を相手に果敢に戦っています。このほか、バスク海軍は、商船改造の3000t級輸送艦2隻を保有しましたが、いずれも喪失しています。
 以下に掲げるのは、両軍が使用した多数の徴用船のうちのごく一部です。艦種は正式な分類ではなく、便宜上、著者が分類しました。

「シウダト・デ・パルマCiudad de Palma」仮装巡洋艦。後、病院船
 元客船。国粋派が接収し、海上封鎖に使用した。このような、国粋派が通商破壊に使用した仮装巡洋艦は、全部で14隻以上に達している。
 後、病院船。もっとも、国際法上の正式なものではない。
 4000総t、速力17kt、120mm×2、76mm×2

「シウダド・デ・バレンシアCiudad de Valencia」仮装巡洋艦
仮装巡洋艦ナディール 元客船。姉妹船「シウダド・デ・アリカンテCiudad de Alicante」と共に、国粋派が接収した。
 偽装のため、「ナディールNadir」と呼称していた。これは、姉妹艦2隻で共有の偽名だったようである。
 戦艦「エスパーニャ」と共に、ヒホンなどの共和派拠点を艦砲射撃したほか、姉妹協同で、商船「ミエラ・リバーMiera River」などを拿捕。さらに、単独では共和派輸送船「カンタブリアCantabria」、バスク輸送艦「ゲルニカGuernika」を撃沈している。
 2496重量t、速力16kt、120mm×1、105mm×2、47mm×2

「ガレルナGalerna」特設砲艦
 元トロール漁船。国粋派徴用。
 非常に活発に活動し、貨物船「ロナRona」、タンカー「ゴベオGobeo」など商船15隻を拿捕したほか、共和派駆逐艦「シスカル」「ディエス」とも交戦している。
 2500(?)総t、速力10kt、102mm×2、47mm×1

「カスティーリョ・デ・オリーテCastillo de Olite」兵員輸送船
 国粋派が使用した徴用輸送船。
 内戦末期に、カルタヘナへの上陸作戦に参加し、要塞砲によって撃沈される。1100人以上の死者を出した。

「カーボ・サント・トーメCabo Santo Tomé」封鎖突破船
 共和派が使用した高速貨物船。
 物資受領のため黒海のソ連領へ向けて地中海を航行中に、スループ「カノーバス」「ダト」に撃沈される。
 12500総t、速力16.5kt、(若干の武装あり?)

「マルクス・デ・コミリャスMarqús de Comillas」病院船。後、輸送船
 元客船。共和派のバレアレス諸島侵攻時に病院船として使用。
 後に輸送任務につくが、軽巡「セルベラ」に拿捕される。

「ナバーラNabarra」特設砲艦
 バスク海軍が保有した4隻の特設砲艦の一。
 艦名の由来はバスク地方に属する県の名前で、反乱軍の同名軽巡「ナバーラNavarra」と同じ由来だが、バスク風の綴りになっているため綴りが異なる。他の3隻のバスク特設砲艦も、バスク地方の県名「ギプスコアGipuzkoa」「アラバAraba」「ビスカヤBizkaya」の名を冠している。
 船団護衛中に、重巡「カナリアス」と交戦して撃沈される。
 1204総t、速力11kt、102mm×2

第9回へ続く
プロフィール

山猫男爵

Author:山猫男爵
ここは「塹壕文庫」「山猫文庫第二壕」に続いて三代目のブログになります。
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Twitter:baron_yamaneko

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