山猫文庫第3版

書評と軍事史関連のレポート、その他ニュースを見て感じたことなど日常のあれこれについて。 

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外来種問題とウナギ

『外来カエル繁殖で県が調査 大量の卵など確認(和歌山)』
『県立自然公園に指定されている田辺市新庄町鳥ノ巣で、環境省の要注意外来生物アフリカツメガエル(ピパ科)が繁殖している問題で、県と県立自然博物館が調査に乗り出した。』(以下略)

 アフリカツメガエルと聞いて、小学校の理科室を思い出しました。水槽の水の中に立ち泳ぎで浮いていた真っ黒い奴。エアーポンプの低い振動音。
 それはさておき、繁殖とは困り者です。熱帯系のくせに、温かい和歌山とはいえ越冬できるとは、しぶとい。話題のツボカビ持ちで、しかも自分は耐性を獲得しているというのが、またたちが悪い。
 人間の手で実験用に持ち込んでおいて、たちが悪いとは、かわいそうなのはかわいそうですが。

 記事とは関係ないですが、ウナギも外来種の生息が確認されているようです。例のヨーロッパ種=アンギラ種。
 養殖魚の脱走や、放流が原因ではないかと言います。中には、発育不良の養殖魚の捨て子までいるようです。
 専門家の方が、生態的地位をめぐっての競合で、在来種を圧迫しないか、心配されています。かつて未確認生物UMA「イッシー」で名を馳せた池田湖でも、天然記念物のオオウナギに代わって、巨大化したヨーロッパウナギが主となっているとか。
 もっとも、他の生物種における外来種に比べれば、それほど深刻な問題ではないと、個人的には思います。ウナギの場合には、繁殖地が極めて限定されているので、第二世代や雑種が誕生することは無いのではないでしょうか。ヨーロッパウナギの場合、繁殖地はサルガッソー海ですが、パナマ運河を往復するとは思えません。仮に、サルガッソーへ帰れたとしても、子供は日本まで来ないでしょう。
 いささか楽天的でしょうか。「馬鹿な、こんな非科学的なことが。ウナギの意志の力は、パナマをも超えるというのか!」

参考:「いらご研究所」より
日本の川にヨーロッパのウナギがいる?
鰻談放談-3-日本水域にいるヨーロッパウナギについて-

アングーラスの逆襲

 ヨーロッパ産のシラスウナギが減少したことに、アジアへの輸出はどの程度絡んでいるんだろうと気になります。
 スペインのバスクなどにあるシラスウナギ(アングーラス)料理のほうが、もっと消費量が多いんじゃないのか。グーラなんていう「もどき製品」まで存在するみたいですし。先日紹介の「ウナギのふしぎ」にも出てきましたもので、こちらのページで実物写真付きで詳しく解説されています。本によるとクリスマスに欠かせない食材だとか。

 さて結論として言うと、近時においてはアジアへの輸出の影響が大きいのは否定できなさそうです。
 1997年のヨーロッパウナギのシラス漁獲が、ネット上の情報によると583tとされます。これに対して、同年の対中シラス輸出が、250t(「ウナギのふしぎ」によると原産地は仏150t・西70t・英30t)と言います。
 ちなみに、空輸中に50%ほどは死亡してしまうそうです。その後の生育中に死亡するのが、さらに20%ほどとか。自然界の数値よりははるかに良いのでしょうけど、生憎と終点は胃袋です。
 まあ、乱獲だけの問題じゃなく、河川環境の問題がもっと大きい気もします。

 ウナギが性的に成熟するには、平均でも10年近くかかると言います。長生きするのになると、60年以上にもなるようです。
 その辺を考えると、親の代の減少が、その子供世代の減少として明らかになってくるには、10年くらいかかる計算になります。つまり親ウナギを乱獲していても、なかなかシラスウナギには影響が生じず、ましてやシラスウナギ捕獲の場合10年くらい経ってから、どうもおかしいぞと気がつく遅延信管。危険ラインを突破して内部爆発一撃轟沈。
 これに漁獲努力拡大による補正が加算されると、シラスウナギの漁獲が目に見えて減ったという時点では、もう完全に手遅れなんてことにもなりかねないような気がします。

 アングーラスも蒲焼も、自鰻の食文化として伝えたいなら、春の土用丑の日なんて煽ったり、純国産天然ものじゃなきゃ駄目なんて言ってる場合じゃなく、グーラの改良でもして我鰻する努力のほうが必要なのかも。

中国ウナギに感謝しませう

 水銀だ、薬品だと評判の悪い中国産ウナギですが、どうやら私達日本人は、そんな中国ウナギに大いに感謝しなければいけないのかもしれない、という話。ここ数日ウナギの話ばかりですが、鰻好きなのです。

 日本在来種のジャポニカ種ウナギは、日本以外の東アジア各地、中国・台湾・朝鮮半島などに分布しています。
 ウナギは、海で産卵された後、川へ上ってきて成長する魚です。ジャポニカ種は、みな同じマリアナ諸島あたりで産卵すると言われます。つまり、中国産も日本産も出身地は一緒。
 そして、ここからがポイントなのですが、ウナギの場合には、遡上する川は決まっていないのではないかと言うのです。

 同じ海と川を行き来する魚のサケの場合、必ず故郷の川へ戻ってくるということが有名です。
 ところが、ウナギの場合、どの川に上るかは法則性が発見されていないと言います。親と同じ川に上るなら、遺伝子パターンが偏るはずなのに、今のところそういう結果は報告されていないのだそうです。同様に、ヨーロッパのアンギラ種やアメリカのロストラータ種も、産卵地はサルガッソーに決まっていながら、住み着く川はランダムらしいのです。
 考えてみれば、ウナギの場合、「故郷の川」には一度も行ったことが無いので、仮に決まった川に行くなら親からの情報伝達が必要です。それにほんの数センチしかないレプトケファルス幼生の状態で、はるばるアジア沿岸までやってくるわけですから、行き着く先は黒潮任せにせざるをえません。

 だとすると、一昨日に利根川で捕れたウナ吉の母親は、中国の揚子江で育った呉ナギさんかもしれないことになります。四万十川で育ったウナ子は、マリアナ沖で韓国済州島出身のウナギと結婚するかもしれません。
 実際のところ、日本の河川開発が進んだ時代、なんとか日本でのシラスウナギ漁獲の命脈をつないでくれたのが、中国などの未開発河川だったという説もあるようです。ダムなどの無い聖域で成長したウナギが、海で産卵して、その子が日本へ流れてきていたと。
 そういう意味で、国産信奉者の皆様も、ちょっと中国に感謝したほうが良いのかもしれません。台湾産稚魚を使ってない純国産は一味違うとか言ってると、たぶん恥ずかしいやつです。

 まあ困ったことに、その聖域だったかもしれない中国の河川もまずいことになっているようですが。
 今度は、日本の河川をもっとウナギが住みやすい環境にもどして、アジアのウナギを救う時というのは言いすぎか。(シラスウナギの来泳数にはエルニーニョ現象が絡んでるとか、遡上しないで海に定住するウナギが主要供給源だとか諸説あるようで)

追記
 上に書いたような話が本当なら、同じアジアの国同士で、これは「我国の資源」と言ってシラスウナギの囲い込みをやっても、あんまり意味が無い気がしてなりません。水揚げ地が台湾だろうと日本だろうと、同じ母集団から捕ってるんですから。

闇夜のウナギ

 ウナギの生態はなかなか知れませんでしたが、ウナギの生産流通も、あまり明らかではないようです。

 例えばシラスウナギの密漁・密輸。平成18年に、成田空港で摘発されたシラスウナギは、2.4tだと言います。
 一見するとそれほどの量でもないようにも思えますが、昨日も書いたように、平成18年に日本で池入れされたシラスウナギの量は公称31.7tという数字に比べると、かなりの量であるのがわかります。昨今問題の台湾からのシラスウナギ正規輸入が、約5tですから、これと比べるとさらに驚きの数字です。末端価格で10億円以上。
 しかも、成田空港で摘発された分だけでこれだけであり、沖縄方面から海路密輸されるルートや、発見されなかった分も入れると大変な数字になりそうです。台湾側は、穴埋めとして日本からのシラスウナギ輸出を求めていますが、実のところ、闇の分を考慮に入れると、相当な「輸出」がすでに実現しているのかもしれません。

 資源管理という視点からすると、こういう状態は非常によろしくないのは明らかでしょう。取締強化が進んでいるようなのは、幸いです。
 シラスウナギが豊漁になるのは「闇の大潮」の晩だと言いますが、闇のウナギは勘弁です。

追記
 資料を見ると、韓国でもシラスウナギからの養殖が盛ん(平成18年池入れ実績22.1t)なようなのですが、これはどこで消費されるのでしょうか。日本への成魚・製品輸入は、大半が中国と台湾からのようで、韓国の名前がありません。
 韓国でもミンムルチャンオなんて呼んで鰻食は結構あるようですが、これ全部が国内消費されるのでしょうか。それともどこかを経由してから日本へ入ってくるのか。どなたか、詳しい方がおられたら、教えてください。

日本が台湾へウナギ輸出

 先日のウナギ禁輸かというニュース以来、日本のウナギについて少し調べていました。鰻蒲焼が大好物の身としては、やっぱり気になります。
 すると、日本は、ウナギ輸入国であるのと同時に、結構な輸出国でもあるという話が出てきて、なかなか興味を惹かれました。

 日本が世界最大のウナギ輸入国・消費国だということは、広く知られているかと思います。
 ところが、一方で、日本から台湾などへの養殖用ウナギ稚魚の輸出も盛んなようなのです。こちらの記事にあるような暴力団の資金源としてのシラスウナギ密輸でなく、正規のシラスウナギや「クロコ」稚魚輸出の話です。
 クロコとは、シラスウナギよりは成長した稚魚のことです。小さくてもウナギの格好をしています。
 一般にウナギ養殖というと、シラスウナギを捕獲してきて養殖池で成長させます。日本は、台湾(公称5t)などからの輸入も含め、平成18年は31.7t のシラスウナギを池入れしたとされます。数で言うと1億5千万尾くらいか。その生育途中で取り出して、今度は台湾へ向けて逆輸出するのです。

 なんでこんなややこしいことをするのかというと、(1)前掲のウナギ密輸の記事にもある日本向け輸出の穴埋めと、(2)台湾のウナギ養殖形態の特殊事情が関係しているようです。
 台湾では、シラスからクロコまでの養殖業と、クロコから成魚までの養殖業が独立しているのだそうです。需要にあわせて、クロコが取引される仕組みになっています。
 そして、日本でのシラス需要増大に応える形で、シラスを輸出する一方で、台湾でのクロコ需要にあわせてクロコを逆輸入する、一種の加工貿易方式が出来上がったのだと言います。日本としては、台湾産のシラコを確保することで、夏場需要に対応した生産量が保証されるメリットがあります。台湾としては稚魚需給を安定させつつ、高値の日本への輸出で利益を上げようという狙いでしょう。貿易振興などの事情も絡むようです。

 先日のニュースに出てきた台湾のウナギ禁輸という話も、実はこのウナギ加工貿易の歪みから生じた問題のようです。
 多分に私の推測ですが、この加工貿易システムの狙いだった稚魚需給の安定が、日本側でのシラス需要変化との連動により、かえって不安定化してしまったのが問題のようです。台湾国内でのシラス養殖が経営難になった一方、日本側からの稚魚輸出も、日本の貿易法制により統制されているため、適時な調整が難しいのがその背景と見えます。おまけに日本からの密輸出規制が強化されたことも関係しているようです。
 しかし、日本側としても、国内生産者や国内ウナギ資源の保護の観点から、そうそう規制緩和をするわけにもいかず、揉めていると。台湾側の禁輸検討の事情も同じようなものでしょう。
 どこで養殖しようと加工しようと、結局は日本人のお腹に収まるということを考えると、また妙な気分になりました。

参考資料
闇ウナギ 旧メクラウナギというものがあったが』(「リバーリバイバル研究所」より)
日本養鰻漁業協同組合連合会」公式サイト。統計など。
<うなぎ>日本養殖新聞」業界紙記者のブログ。
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